研究実績の概要 |
機能性金属酸化物のナノ構造化による高機能創出を目的として、対象物質の成長位置、形状、サイズを3次元方向全てで精確に制御して作製する独自ナノ超構造創製技術「3次元ナノテンプレートPLD法」を確立した。3次元ナノテンプレートPLD法でペロブスカイトMn酸化物(La,Pr,Ca)MnO3 (LPCMO)のナノ細線構造体を作製し機能性酸化物3次元ナノ構造の伝導特性を計測し、バルクでは観察されない急峻なstep抵抗変化を見出した。金属-絶縁体転移(MIT)に伴う伝導度と相状態の相関を解明するために、光と電波の中間の周波数をもつテラヘルツ(THz)波を用いた、THz時間領域分光(THz-TDS)を計測手法として研究を行った。10-250Kの温度領域でTHz-TDS測定(0.5-3.5 THz)を行い、LPCMOのTHz伝導度を求めた。得られたTHz伝導度スペクトルの変化率から、温度により伝導特性は3つに分類できることが分かった。これが、金属状態、金属/絶縁体共存状態、絶縁体状態に対応し、金属の伝導を記述するDrudeモデル、絶縁体の伝導を描写するAustin-Mottモデルとを、金属/絶縁体の体積比率で重みを付けて組み合わせた複合モデルにより記述することに成功した。これにより、強相関物質のMIT過程の定量的な伝導度変化と相状態の割合変化と併せて導出できる解析手法が実現された。この手法は、非接触手法であるため電極の作製に困難が伴うナノ構造試料にも適応が可能である。確立した計測手法で100 nm線幅を持つLPCMOナノ細線構造体試料のTHz-TDS測定においても、定量的に伝導度と相状態の割合の変化の導出が可能となり、ナノ構造に起因する劇的な新現象:巨大物性の探索につながった。 さらに、イオン液体をゲート絶縁層に用いたLPCMO電界効果トランジスタ構造において、静電的キャリアドーピング効果で金属-絶縁体転移温度の減少/増加、抵抗の増加/減少を制御することに成功した。
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