研究概要 |
本研究では、窒化物半導体GaN,InGaN,InNの高品質なナノサイズ柱状結晶を対象として、(A)発光効率から発光デバイスとしての特性を評価、(B)キャリアダイナミクスとナノサイズ効果の解明、(C)集団配列効果により生じる光機能の開拓、という3つの目的に向かって研究を進めていく。 25年度はまず、(A),(B),(C)それぞれを推進していくために必要な顕微分光系の構築を行った。本研究ではナノサイズ結晶が規則配置した試料を用いているが、結晶の配置面積が小さいために、光励起測定を最適に行うためには顕微分光法の使用が必要であった。25年度は、立ち上げた顕微分光系を使用して(A),(B),(C)それぞれについて並行して研究を進めてきた。 (A)では、構築した顕微分光系にCWレーザーおよびフェムト秒パルスレーザーを組み合わせて、両光源で励起した場合について内部量子効率の評価をそれぞれ行った。 (B)においては、フェムト秒パルスレーザーを使用することによって時間分解分光を行った。(A)における効率測定とも合わせた解析から、励起密度の上昇とともに非輻射中心へのキャリアトラップ、内部電場の遮蔽、オージェ効果と考えられる非輻射レートの増加など、キャリアダイナミクスの基本的な振る舞いを明らかにした。 (C)については、フェムト秒パルスレーザーによる強励起条件下において、集団配列効果に起因した誘導放出現象を確認した。光バンド構造計算との比較から、この誘導放出が分布帰還型レーザーの機構から生じていることが明らかになった。また時間分解測定から、この誘導放出過程が非常に高速なダイナミクスであることが判明した。さらに空間フィルターを用いた空間分解分光から、この誘導放出現象は構造ゆらぎに敏感であり、ゆらぎが大きいと光局在に起因したランダムレージングに近い振る舞いを示すことを明らかにした。
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