研究課題/領域番号 |
25800181
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
鹿野 豊 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 特任准教授 (80634691)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 半導体微小共振器 / Cavity QED / 励起子・ポラリトン / 量子凝縮 / レーザー発振 / イオントラップ |
研究概要 |
高励起状態における半導体微小共振器中の励起子・ポラリトン凝縮体に関する研究を行った。本研究では現象論的アプローチをとるため、実験的実証証拠を集めることが必要不可欠である。そこで、本年度は、レーザー転移付近を詳細に調べたところ、反転分布を伴ったレーザー発振をしない可能性が今回のサンプル(GaAs / InGaAs の量子井戸)で発生していることを突き詰めた。これは、これまでの理論体系では明確には説明出来ない現象である。本研究結果により、非平衡状態まで記述することが出来るケルディッシュグリーン関数法を用いた研究の重要性が一層増した結果と言える。更に、励起子・ポラリトンのドレスト状態と思われるようなスペクトルに対して解析を行い、現象論的にはフォノンの効果を陽に入れ込まなくても十二分に実験結果を説明出来るということが分かった。しかし、凝縮体形成に対する知見は何も得られていないというのが現状である。 また、フォノンに対する影響を顕著に調べるために、イオントラップの系に関して解析を行った。本年度解析に用いた線形パウルトラップ型のイオントラップでは、フォノン状態をきちんと定義出来るほど、制御性が良いことが実験的に知られているためである。その状態に対して、イオンが複数いる少数多体系に対してフォノンがどのような時間変化が起こるかを解析した。ここで得た知見を基に、半導体微小共振器中のフォノン状態の解析を進められる契機となる結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、実験の進捗状況に伴い、高励起状態に関する研究が進展した一方で、低励起状態に関する知見は得ることが出来なかった。凝縮体になる瞬間に関する実験技術の開発が進んでいないのと同時に、理論的にも励起子の多体効果は理論モデルの中に組み入れているものの、波数依存性など実験結果を再現できていない現象論的記述になっている。これらに関しては、本年度、学会発表はあるものの、投稿論文に関しては現在投稿中である。また、研究人員も不足しているため、あまり前進しなかった。その代わり、フォノンの影響を調べるためにはじめたイオントラップの解析は非常にうまくいき、現在、論文を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
まずは研究人員を増員し、複雑ではあるがケルディッシュ形式での理論モデルの再構築を行い、フォトルミネッセンスのスペクトルに関して数値計算を行う。これが低励起領域でのポラリトン凝縮体形成の過程までを理論モデルとして取り込まなくてはならない。来年度行う予定であったフォノンの影響を調べることに関しては既に終わっており、高励起現象に関する現象論的記述も既に行ってある。残されたのは、凝縮体形成過程時の理論計算であり、グロスピタエフスキー方程式と符合する形で理論モデルが構築出来るであろうと計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
端数処理に関しては、次年度計画の中でやり繰り可能であると判断したため。 平成26年度、有限要素法に関するソフトウェアを購入しための、その維持費に使用する計画である。
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