研究課題
若手研究(B)
本年度は、以下のような進展が得られた。(1)超伝導体CeRu2、KFe2As2、CeCu2Si2について常圧における角度分解磁場中比熱測定から得られた実験結果をそれぞれ論文にまとめて公表した。特にCeCu2Si2に関しては、これまで「ギャップにノードを有する」異方的d波超伝導体であると考えられてきたが、実はマルチバンドのフルギャップ超伝導体である可能性が高いことを見出し、結果の詳細をPhys. Rev. Lett.誌にて公表した。また、重い電子系超伝導体UBe13について常圧で角度分解磁場中比熱測定を行い、超伝導ギャップ構造および磁場中常伝導状態に関する興味深い実験結果を得た。(2)一軸性圧力下での比熱の測定精度を上げるため、試料温度計の小型化・高感度化を行った。今回の温度計の改良は常圧比熱測定の精度向上にも大いに役立ち、これまで困難であった比較的熱容量が小さい試料の比熱測定も高精度に行えるようになった。実際に、極低温で比熱が非常に小さくなるKFe2As2について精密に温度・磁場・磁場方位依存性を測定することによりノード構造や多バンド超伝導特性に関する重要な情報を得ることができた。結果の詳細はJ. Phys. Soc. Jpn.誌で公表した。(3)一軸性圧力セル中のCeCoIn5の磁場中比熱を交流法を用いて測定し、磁場中で常圧での実験結果を再現できることを確認した。さらに、一軸性圧力セルの加圧テストを行った。具体的には、マノメータとしてセル中の異なる箇所に鉛と錫を配置し、それぞれの超伝導転移温度の圧力効果を調べることで外力が試料にきちんと印加されているかを評価した。その結果、当初のセルでは外力が1 kNを超えると試料にうまく加わっていかないことが判明したので、圧力セルのデザイン改良を行った。その後再テストを実施し、2 kNまで外力がきちんと試料に加わることを確かめた。
2: おおむね順調に進展している
これまでに一軸性圧力セルの開発も終わり、圧力セル中で試料の磁場中比熱を精度良く測定することにも成功した。また、常圧における角度分解磁場中比熱測定から複数の超伝導体について興味深い実験事実が得られており、本研究はおおむね順調に進展している。
常圧での角度分解磁場中比熱測定からは興味深い実験結果が得られてきているので、今後は一軸性圧力下での実験を進めていく。まずは重い電子系超伝導体CeCoIn5の超伝導相図や回転磁場中比熱振動の一軸性圧力効果を明らかにする予定である。その後、他の重い電子系超伝導体についても一軸性圧力実験を行い、超伝導対称性に関する新たな知見の獲得や異方的結晶歪みに由来する新奇現象の発見・解明を目指す。また、引き続き常圧下での磁場中比熱測定についても力を入れ、将来の一軸性圧力実験にも備える。
本年度は圧力セルの改良および常圧での角度分解磁場中比熱測定に集中して取り組み、当初予定していた一軸性圧力実験時に試料を整形する上で必要な研磨器具の購入を延期したため。研磨器具の購入に使用する。圧力セル部品は消耗品であるため、その購入にも充てる。また、研究成果発表および情報交換・議論は積極的に行いたいので、国内外の会議等に参加するための出張旅費にも来年度の経費の一部を使用する。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (8件) 備考 (2件)
Phys. Rev. Lett.
巻: 112 ページ: 067002(1-5)
10.1103/PhysRevLett.112.067002
J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 83 ページ: 013704(1-4)
10.7566/JPSJ.83.013704
巻: 83 ページ: 033707(1-4)
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巻: 82 ページ: 123706(1-4)
10.7566/JPSJ.82.123706
Phys. Rev. B
巻: 88 ページ: 184431(1-5)
10.1103/PhysRevB.88.184431
巻: 88 ページ: 174410(1-5)
10.1103/PhysRevB.88.174410
巻: 110 ページ: 157205(1-5)
10.1103/PhysRevLett.110.157205
http://sakaki.issp.u-tokyo.ac.jp/
http://sakaki.issp.u-tokyo.ac.jp/user/kittaka/index.html