研究課題/領域番号 |
25800190
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 洋介 東京大学, 物性研究所, 助教 (90422443)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 重い電子 / 量子臨界現象 / 価数揺らぎ / 異方的c-f混成 / 非フェルミ液体 |
研究概要 |
価数揺動系β-YbAlB4における“新奇な量子臨界性”と“イッテルビウム(Yb)系初の重い電子超伝導”について、その詳細と起源を明らかにするため、この系の“極めて大きな異方性”に着目した研究を進めている。初年度はまず、同じく価数揺動系で同様の異方性を持つ多形体α-YbAlB4について極低温度での比熱測定を行った。この物質はβ型と対照的に零磁場の基底状態がフェルミ液体である一方、c軸方向に約3 Tを印加するとメタ磁性的な異常を示す。緩和法による比熱測定から、c軸方向に磁場をかけたときのみ、約3 T以上で重い電子が抑制されること、さらに内部緩和の時定数から核スピン系(ここでは主にAlとBの核)の核スピン-格子緩和時間T1が見積られることを明らかにした。T1は印加磁場の方向に対して異方的に振舞い、c軸方向に磁場をかけた時のみ、約3 T以上の磁場で大きく減少することが分かった。 また、磁場角度回転実験を行うためのピエゾローテータを購入し、これを希釈冷凍機に組み込み、既存のファンクションジェネレータ、パワーアンプと組み合わせて駆動することを試み、概ね成功した。また、希釈冷凍機にSQUIDを組み込み、約0.2 T以下の磁場下において20 mKに至る極低温でのAC・DC精密磁化測定が可能になった。また、20 mKに至る極低温度における極微試料の比熱測定に対応するため、比熱セルの改良を行った。これらの装置を用い、非磁性結晶場基底状態を持つ籠状物質PrTr2Al20(TrはTiおよびV)が多極子秩序相内で示す超伝導(転移温度はTi, Vに対して各々、200 mK, 45 mK)について、これらがバルクの重い電子超伝導であることを確認することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ピエゾローテータを用いた磁場角度回転実験セットアップについては順調に準備が進んでいる。また、20 mKに至る極低温でのSQUID 精密磁化測定装置が概ね立ち上がった。この装置を用いて、極低温域で超伝導転移を示す籠状物質PrTr2Al20(TrはTiおよびV)についてそのバルク性を示すことに成功するなど、概ね順調に研究が進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
立ち上げが概ね完了した極低温SQUID 精密磁化測定装置、および比熱測定セルを用いて、β-YbAlB4の超伝導性の詳細を調べる。また、ローテータを用いてまずは上部臨界磁場の磁場角度依存性を電気伝導度測定から明らかにする。これらの測定と並行して、SQUID磁化測定装置にローテータによる磁場回転機構を組み込むための準備を行い、その後、実際に測定を行う。
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