平成27年度の研究目的は、制限空間内の超流動ヘリウム3で実現するストライプ相を対象に、システム表面やドメイン境界における準粒子状態を明らかにすることであった。薄い平行平板中の液体ヘリウム3においては、容器表面の準粒子散乱によって二次元面内で自発的に並進対称性の破れた超流動状態が現れることが知られている。このとき、壁に垂直方向の超流動ギャップは二次元面内で周期的にその符号を変える、すなわち、周期的なドメイン構造を造る。このストライプ相は、強磁場下の超伝導体で現れるFFLO状態と同等のCooper対凝縮状態として理解できるが、超伝導ギャップが周期的にゼロとなる後者に対し、ストライプ相では秩序変数の1成分のみが周期的挙動を示すため、FFLO状態とは異なる準粒子励起が期待される。Eilenberger方程式を数値的に解くことで角度分解局所状態密度を計算した結果、ストライプを横切る準粒子trajectoryに対しては、ドメイン境界付近で、一様系には見られない準粒子束縛状態が現れることが分かった。一方、ストライプに平行なtrajectoryに対しては、一様系と同様な準粒子励起が現れる。このストライプ構造に起因した束縛状態は、秩序変数の壁に平行成分が一様かつ有限であることを反映して有限のギャップをもつことも明らかとなった。本内容については、日本物理学会で講演を行い、前年度のストライプ相の安定性に関する結果と合わせて、現在、論文を執筆中である。
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