研究課題
本研究は高い密度で水素を含有する金属水素化物を合成し,それに高圧力を加えることで,金属イオンによって超高密度水素が電子ドープされて金属化した状態,すなわち金属水素状態を創出することを目的とする。これによって,単体H2では未だ実現に至らない金属水素の魅力的な物性を明らかにする。2015年度は,2014年度に合成に成功したリチウム水素化物(LiHx)について,詳細な高圧下Raman散乱測定を行い,内部に含有されたH2分子の圧力に対する挙動を調べた。X線回折測定の結果と合わせて解析すると,高温高圧合成によって2種類のLiHxが生じることが明らかとなった。さらに,一方のLiHxの内部ではH2分子を取り囲む原子によって,隣り合うH2分子間の相互作用が遮蔽された状態にあることを明らかにした。またもう一方では,分子内結合が弱くなったH2分子が存在することを明らかにした。周囲のLi原子やH原子との相互作用の結果,H2分子の反結合準位に電子が供与されたために,結合が弱まったと考えられる。アルカリ金属水素化物について,H2分子を含有する水素化物を合成し,内部に含まれるH2分子の存在状態を明らかにした,初めての実験研究となった。2014年度に合成に成功したベリリウム水素化物(BeHx)について,Raman散乱測定とX線回折測定によって結晶構造を明らかにした。その結果,従来常圧で合成されるBeH2とは結合様式の異なる新奇水素化物であることが明らかとなった。H2分子に対する電子供与は,LiHxで当初の狙い通り得られた。また,水素リッチな軽元素水素化物の合成の点でも,当初目標にある通りの成果が得られたと言える。一方,LiHxとBeHxはそれぞれ180 GPaと40 GPaの圧力までは金属化を起こさず,これら物質の金属状態の実現には更なる高圧力が必要であることが明らかとなった。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
High Pressure Rsearch
巻: 35 ページ: 16-21
10.1080/08957959.2014.999677