研究課題/領域番号 |
25800200
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
中村 和磨 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60525236)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 第一原理GW計算 / プラズモン素励起 / プラズマロン状態 / 強相関電子系 |
研究概要 |
第一原理GW 計算を用いて物質のプラズマロン状態について解析した。プラズマロン状態とは、準粒子とプラズモンの結合状態であり、とくに「フェルミ面近傍のバンドが他のバンドから孤立している系」や「低電子密度金属」の物性の議論において重要となる。これらの系のプラズモン励起は、局所的電子間反発に匹敵するので、電子相関効果とプラズモン励起の競合が生じる。本研究では、第一原理GW計算を用いて、プラズマロン状態の微視的機構を調べた。平成25年度は、有機化合物(TMTSF)2PF6と遷移金属酸化物SrVO3について調べた。量物質とも、Γ点の占有バンド側、RおよびM点の非占有側に顕著なプラズマロン状態スペクトルが観測された。この計算では、11×11×11 k点サンプリングが採用されたが、プラズモン励起エネルギーの定量性は、k点数について鋭敏であり、高密度のサンプリングが必要である ことが分かった。そこで、計算コスト削減を目指して対称性を考慮したGW計算コードを開発した。現在、動作確認を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、研究遂行に必要となる方法論開発に注力した。単にプログラムを実装するだけでなく、自身の研究成果の確度を高めるための技術的工夫 (大規模並列化、対称性を考慮した計算コスト低減) を行い、この分野における最高精度の計算プログラムを完成させた。方法論に関する詳細と、これを用いた有機化合物(TMTSF)2PF6に関する適用結果を論文にまとめた。この結果は、後に続く論文の母体であり、それを初年度に纏める事ができたのは今後の展開において大きな成果だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、開発プログラムを用いて、個別物質に適用した実証計算に関する論文を生産する。とくに、遷移金属酸化物SrVO3およびSrRuO3、有機導体TTF-TCNQ、有機物超伝導体K3C60、層状遷移金属窒化物 HfNCl、アルカリ金属充填ゼオライトについての計算を行い、それらについて論文を纏める。SrVO3およびSrRuO、TTF-TCNQは、角度分解光電子分光実験により電子状態が観測されているので、実験家と共同で、自身の提案している「低エネルギープラズマロン状態」がこれらの物質で実現しているかを検証する。
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