研究課題/領域番号 |
25800200
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
中村 和磨 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60525236)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / 多体摂動計算 / GW計算 / 光電子分光 |
研究実績の概要 |
物質の低エネルギー現象の非経験的理解のために, 第一原理多体摂動論に基づく計算手法の開発および具体系への応用研究を進めている。遷移金属酸化物や有機化合物のプラズマロン状態 (準粒子とプラズモンが結合した状態)に着目し, 実験 (光学測定・角度分解/角度積分光電子分光) との比較を通した定量的検証を行っている。
乱雑位相近似 (RPA) 計算コード, GW自己エネルギー計算コード, ともに対称性を課すことのできるコードに改変し, 計算コスト (計算時間およびメモリサイズ) を一ケタ以上削減している。大規模系が取り扱えるだけでなく, 密な k 点サンプリング下での計算が可能でなり, 様々な物質群に適用可能なコードとなっている。平成27年度は, GW+キュムラント展開法コードを自作し, 低エネルギー電子構造における素励起の定量的記述をさらに高めることのできるコードに拡張した。
この開発コードを用いて, これまでほとんど議論されてこなかった「プラズモンの物理」が, 有機化合物 TMTSF(PF)6 や遷移金属酸化物 SVO3 の具体系でどのように発現するか、その結果を論文にまとめた。コードの詳細, 計算を加速・安定化するための工夫, プログラムの詳細について論文で詳述し, 包括的論文を完成させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は, これまでの研究内容を具体的に論文にまとめた。開発コード詳細, 具体的な物質群 TMTSF(PF)6, SrVO3, K0.3MoO3 への適用, 計算結果と実験結果の比較, 結果の議論等, について一定の結論をまとめた。三件の招待講演を受け, それらの会議にて成果発表を行い, 研究成果を積極的に発信した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の成果を受けて, 今後は, 第一原理計算物性研究の主目的である「具体的な理論物質設計」に重心を移して研究を進めたい。超伝導転移温度・熱電係数・電気伝導度評価など, 物質設計により適合したコードへの拡張を行う。これらのコード拡張は, すべて本プロジェクトの延長上にあり, これまで培ったノウハウのおかげで, 効果的に実行可能である。国際会議での発表を積極的に行い, 研究成果の国外への発信にも努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に,研究成果を国際シンポジウム(米国)にて発表する予定であったが,大学業務のため参加を見送らざるを得なくなった。また, 計算結果の機構解明のみならず, データ科学的手法 (機械学習等) を用いた物質探索を行うことで, 本プロジェクトの目的をより精緻に達成することができると判断した。このため,シンポジウムでの発表と新規物質探索を今年度 (平成28年度) に行うこととし, 未使用額をその経費に充てることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
交付額 (平成27年度経費繰り越し分) については, 国外で開催される国際シンポジウムの旅費 (米国一週間滞在・ドイツ一週間滞在) に充て, 研究成果の積極的発信を行う。
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