研究課題
本年度は以下の進展があった。(1)前年度に見出した、半導体型SWCNTが示す大きなゼーベック係数の研究を発展させた。具体的には、化学ドーピングやイオン液体を用いた電気化学的ドーピングによるキャリア注入を行い、キャリア数変化によって熱電物性が敏感に変化することを明らかにした。また、半導体型SWCNT薄膜に金属型SWCNTが残留することで、ゼーベック係数の低下を示唆する結果を実験的に得ていたが、非平衡グリーン関数と密度汎関数法に基づいた計算からも、金属型の混入が原因であることを支持する結果を得た。またその計算から、熱電性能指数を最大化するための指針も得ることができた。これらを日本物理学会・応用物理学会等において発表し、論文として発表した。(2)直径の異なる四つの試料に対して、強磁性不純物を取り除く有効な精製法を見出した。その結果、SWCNTの磁化率に明確な直径依存性が見られることを初めて明らかにした。この直径依存性は、理論から予測される値とよく一致しており、SWCNTの磁性がグラフェン格子による軌道反磁性とAharonov-Bohm効果によって理解できることを示している。この成果を日本物理学会において発表し、現在論文執筆中である。(3) 直径の異なる複数のSWCNT試料に対して13C NMR測定を行った。その結果、NMR緩和率の温度依存性が朝永Luttinger液体の振る舞いを示すこと、NMR緩和率の値が理論計算から予想される直径依存性を示すことを明らかにした。さらに金属型のみを含むSWCNT試料では、半導体と金属型が混ざった試料と明瞭に異なる振る舞いを示すことを示した。これらの成果は日本物理学会で発表し、現在論文執筆中である。
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http://www.tmu.ac.jp/news/topics/8257.html