研究課題
若手研究(B)
光電子分光法を用いた遷移金属磁性体の電子状態研究として、以下を行った。1. 装置改良:マニピュレータに直接搭載する真空中劈開用ブレードつき基板を作成した。マニピュレータ先端部の設計を行った。熱輻射シールドの設計、作成を行った。コイルによる外部磁場印加前後における装置内部の(残留)磁化測定と分解能への影響を確認し、磁場印加による悪影響がないことを確認した。2. Ni基ホイスラー合金の偏光制御硬X線光電子分光:SPring-8 BL-19LXUにおいて、Ni_2_MnGa試料に対して、Ni s電子あるいはd電子を強く観測する2通りの偏光を励起光とした光電子分光測定を行った。その結果、構造相転移の前後で、両偏光を用いたスペクトルがフェルミ準位近傍の同様なエネルギーにおいて変化していることを見出した。また、表面敏感な測定で報告されている構造相転移の前駆現象的振る舞いは、バルク敏感な本測定では観測されなかった。3. Ni基ホイスラー合金の第一原理計算および実験との比較:Ni_2_MnGaに対してバンド計算を行い、各電子軌道の部分状態密度を求めた。2の実験結果との比較の結果、両者はフェルミ準位上の強度を除いて定性的のみならず定量的に良い一致を示した。この計算結果を基に実験結果の解釈を行い、Ni基ホイスラー合金における構造相転移の起源について議論した論文を投稿中である。4. MnRhの光電子分光:反強磁性転移・マルテンサイト変態を示すMnRhに対して、SPring-8 BL-19LXUにおいて光電子分光測定を行った。その結果、相転移の前後で電子状態の変化を観測し、低温相においてフェルミ準位近傍の電子状態が擬ギャップ的振る舞いを示すことを見出した。バンド計算との比較を行い、相転移が電子状態のエネルギー利得という観点で定性的に理解できると議論した。
2: おおむね順調に進展している
ホイスラー化合物の電子状態研究は、測定を行い、実験結果について論文を投稿している。スピネル化合物は、測定のためのブレードつき基板を作成し終えた段階にあり、測定はまだ実施できていない。一方、当初考えていた上記2物質の他に、同様に磁気・構造相転移を示す系としてMn基2元系合金の電子状態研究を行っている。
1. 測定環境:所属の異動を行った。所属研究室では、以前所属の研究室にあったXe, He放電管に加え、Ne, Ar放電管とスピン分解分析器を有し、また放射光源としてHiSOR BL-5を使用可能である。これらの光源・装置を用いてバルク敏感性や偏光を考慮した実験を行う。2. 装置改良:作成したブレードつき基板の真空中における動作確認、特に稼働による脱ガスの影響を調べ、試料測定を行う。3. 試料測定:ホイスラー化合物については、代表例のNi_2_MnGaの電子状態を行ったので、部分置換系や他の化学式を持つ試料との電子状態比較を行う。また、昨年度議論したs電子およびd電子の構造相転移に対する寄与の他に、p電子の寄与について計算を含めた検討を行う。スピネル化合物は、角度積分光電子分光実験から行っていく。Mn二元系化合物は、組成比を変化させた際の電子状態の影響を考慮し、実験と計算の対応を調べる。
基金として使用する消耗品の購入に充てる
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