研究課題
スピン流生成の中心原理は磁化や光など多様な形態で存在する角運動量間の相互変換である。これまでスピン流生成に用いられることのなかった角運動量として核スピン系を対象とし、核磁気共鳴法(NMR)を用いたスピン流生成実験に取り組んだ。試料は磁性層と白金層から構成される。磁性層中の核スピンを励起し白金層にスピン流を注入し、白金層の逆スピンホール効果によって電圧に変換する仕組みである。まず当初計画のとおり磁性層にYIG(Yttrium Iron Garnet)を用いた試料については、スピン流由来の電圧信号を増幅するためにEBリソグラフィーを用いて白金、金を交互にジグザグに配線した試料で実験を行う予定であったが、線幅10um程度の加工において描画過程で基板表面に付着するほこりのために直列配線に断線が生じる困難があった。昨年度はこの断線を補修する試みを行い、マイクロマニピュレーターによって熱硬化性の導電性接着剤を断線部に付着すれば、スポット経10um程度で断線を補修でき、通電できることがわかった。現在、配線全体に分布する断線を補修する作業を行っており、これが完了次第スピン流生成実験を行う予定である。次に磁性体としてCuO単結晶を使用した実験について記す。これは核スピン系の緩和が速いほうが角運動量の移行が起こりやすくスピン流が生成されやすいのではないかという着想に基づき作成した試料である。CuOは220Kにおいて反強磁性転移し、その直上においてはクリティカルスローイングダウンによってCuの核磁気緩和は測定限界まで速くなる。これを利用し、転移点直上において核スピンポンプ実験を行った。フラックス法において単結晶試料を作成し、軸出し研磨の後、白金を蒸着し実験を行ったが有意な電圧は観測されなかった。研磨後の表面アモルファス層が原因である可能性があるので、今後、研磨方法や研磨後の熱処理を検討する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件)
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