研究課題/領域番号 |
25800211
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
川崎 郁斗 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 基礎科学特別研究員 (90552307)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | URu2Si2 / ミュオンスピン緩和法 / 隠れた秩序 / 超伝導 |
研究概要 |
本研究は、純良URu2Si2 単結晶にラザフォードアップルトン研究所・理研ミュオン施設の世界最高レベルの強度を持つパルスミュオンを用いたミュオンスピン緩和法を適用し、隠れた秩序相及び超伝導相の時間反転対称性の破れの直接的な検証を実施することを目的としている。今年度に実施した零磁場下でのミュオン実験の結果、指数関数型の緩和スペクトルが観測され、その緩和率が17.5 K以下の隠れた秩序相において明瞭に増大する振る舞いを観測した。よって、隠れた秩序相が非常に微弱(0.1 Oe程度)であるが内場を有し、時間反転対称性を破っていることがわかった。また、隠れた秩序相で観測された、内場が静的なものであるのか、または動的であるのかを調べるために、縦磁場依存性の測定も実施した。その結果、数Oe程度の非常に微弱な内場で緩和がデカップルする振る舞いが観測され、隠れた秩序相で観測される内場はミュオンスピン緩和法の時間スケールでは静的であることがわかった。さらに、隠れた秩序相で発達する内場の異方性を調べるために横磁場下のミュオン実験を実施し、隠れた秩序相の内場はa軸及びc軸方向の両成分を有していることを明らかにした。圧力下で発現する反強磁性相では、ミュオン位置での内場はc軸成分しか存在しないことが報告されており、上記の結果は、隠れた秩序相の秩序変数は、圧力下で発現する反強磁性相とは異なる対称性を持つものであること示唆するものであるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点までで、隠れた秩序相に関しては零磁場、縦磁場、横磁場下のミュオン実験はすべて完了しており、興味深い結果が得られているので、全体的には順調であると考えている。超伝導相に関しても、零磁場下の実験はすでに完了しており、時間反転対称性の破れを示唆するデータが得られている。しかし、観測される異常が大変小さいため、より高統計の再実験が必要であると考えている。この点は次の年度の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
超伝相の時間反転対称性の破れの検証に集中したい。より高統計の再実験を行い必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、消耗品の購入が予定より若干少なかったからである。 学会参加のための旅費に使用すること、研究を遂行するにあたって必要となる消耗品を購入すること等を検討している。
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