本研究の目的は純良URu2Si2単結晶にラザフォードアップルトン研究所・理研RALミュオン施設の世界最高レベルの強度を持つパルスミュオンを用いたミュオンスピン緩和法を適用し、隠れた秩序相及び超伝導相の時間反転対称性の破れの直接的な検証を実施することである。平成25年度は隠れた秩序相に対して、零磁場、縦磁場、及び横磁場下でのミュオンスピン緩和実験を実施し、隠れた秩序相で発達する内場の詳細を観測し、隠れた秩序相の秩序変数は圧力下で発現する反強磁性相とは異なる対称性を有することを示唆する結果を得た。次のターゲットである超伝導相の時間反転対称性の破れの有無の検証をするために、零磁場下でのミュオンスピン緩和実験を実施した。実験の結果、超伝導転移点以下で僅かではあるが緩和率のさらなる増大を観測した。縦磁場実験を行ったところ、40 Oe程度の微弱な縦磁場で緩和率の発達が抑制される振る舞いが観測された。よって、超伝導相内での緩和率の増大は静的な内場の発達によるものであると考えられる。観測された緩和率の増大は、この系において時間反転対称性を破るカイラル超伝導が実現していることを示唆する結果である。しかしながら、観測された緩和率の増大は非常に微弱であるため、最終的な結論を得るためには更なる研究が必要であると考えられる。また、今年度は得られた研究成果をJournal of Physical Society of Japanに掲載し、成果の普及を行った。
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