研究課題/領域番号 |
25800214
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
能川 知昭 東邦大学, 医学部, 講師 (00399982)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 剛体球 / ガラス / ランダム構造 / 最適化 |
研究実績の概要 |
1成分系の高密度状態をWang-Landau sampling法で求める結果は数百粒子程度まで可能になった。高密度領域は閉じ込めの調和ポテンシャルから予想される密度依存性から外挿して求めている。今年度は多分散系に取り組んできた。単分散では結晶構造が自明な高密度構造であるのに対し、多分散では予想通りランダム構造が現れることを確かめた。比較的少数粒子の有限系でも、大粒子と小粒子の相分離が起こることがわかってきた。これはガラス構造の安定性が、比較的長い特徴的スケールの相関によってもたらされていることを示唆している。 2成分系では3次元の状態空間を扱うことになる。これを探索するために並列シミュレーションが必須であるが、マルチスレッドの初期状態をどのように作るかが問題であった。当初は、シミュレーション開始時に、各スレッドに対して初期粒子配置を作成していたが、状態変数によっては人為的に作成するのが不可能な場合もあった。スレッド間で扱う空間を重複させることで、1つのスレッドの途中の状態を別のスレッドの初期状態にすることができ、事前に初期状態をつくる必要がなくなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度からひきつづきの課題ではあるが、連続変数の自由度を持つ系に対するWang-Landau samplingの適用に関して、剛体球密度の高い領域で、シミュレーションの収束判定を満たさないという問題が生じている。現状では、外挿法によって高密度極限を見積もるという方法をとることで一応の回避をして、先の段階へ進んでいる。しかし根本的な解決も完全に断念していないため、そちらにも時間がとられているのが現状である。同様な困難は他の研究者からも聞いているので、これはモデル固有の問題ではなく、その解決自体も重要な成果となると見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
前項で述べた困難を解決するためには、より単純なテストモデルでの調査が有効だと考えている。これまで試していない1次元モデルや、現在取り組んでいる非格子系よりも易しいであろう格子系の連続自由度モデルの基底状態探査をあつかうつもりである。 その上で、粒子のランダム配置の構造解析を進める。現在扱っているポテンシャルによる閉じ込めの方法は、平衡状態としてランダム構造を出すための条件であるが、それ特有の有限サイズ効果はさけられない。この効果を差し引いたバルクのランダム構造を見出すのが本研究の主たる目的であり、最終年度ではこれに集中する。系統的なサイズ依存性の解析によってサイズに寄らないバルク構造を見出す。通常用いられているの動径分布関数などに加えて、新たな構造評価の指標を見出すことにも同時に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張を見込んで確保していたが、本年度に適当な国際会議が開催されていなかったため次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度予算は当初計画通りに物品・旅費に使用し、繰り越し分は追加の国際会議等の旅費に充てる。
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