研究実績の概要 |
最終年度の研究成果:O'Connell-Yorランダムポリマーモデルにおける行列式構造を研究した。O'Connell-YorランダムポリマーはKPZ普遍クラスに属する典型的なモデルであり、量子戸田格子やMacdonald対称関数との関連を持つ特別な可解構造を持つことがO'Connellによって明らかにされた。またBorodin-Corwinはこの構造を利用して、ポリマーの自由エネルギーの分布関数を具体的に導出している。特にポリマーの分配関数のモーメント母関数がFredholm行列式によって表されることが知られているが、この行列式構造を深く理解することが重要である。我々はモーメント母関数の有限次元行列式を用いた表示を得た。この行列式は温度ゼロの極限でGaussian Unitary Ensemble(GUE)の固有値密度に収束することが容易に分かり、零温度ポリマーにおけるWarrenの結果の有限温度における一般化となっている。
研究期間全体における成果:KPZ方程式、ポリマーモデルや相互作用確率粒子系等のKPZ普遍クラスに属する可解モデルにおいて、それらの背後に潜む数理構造を明らかにし、空間2点相関関数等の重要な物理量を厳密に導出した。2014年8月には京都大学基礎物理学研究所で国際会議"Interface fluctuations and KPZ universality class - unifying mathematical, theoretical, and experimental approaches"を主催した。また2016年2月にはカリフォルニア大学サンタバーバラ校で国際会議"Non-equilibrium dynamics of stochastic and quantum integrable systems"を主催した。
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