自律的に動作する分子マシンの研究は、非平衡統計力学の重要な研究テーマであるばかりでなく、生体分子の動作原理を解明するうえでも重要な役割を果たす。本研究ではとくに情報処理に焦点をあて、自律的な情報処理を行う分子マシンの一般論の構築と、実際の生体情報処理への応用の研究を行った。その結果として、「ゆらぎの定理」と呼ばれる非平衡統計力学の関係式に情報流を取り入れた、新しい一般理論の構築に成功した。これは情報と熱力学を融合させる非平衡統計力学の基本原理の観点から興味深い。さらに、それを生体内のシグナル伝達に応用し、大腸菌の走化性において情報流の果たす役割を解明することに成功した。
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