研究課題/領域番号 |
25800220
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
大槻 道夫 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 講師 (30456751)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ジャミング転移 / 粉体 / 非平衡物理 / レオロジー / 乱流 / 剛性率 |
研究実績の概要 |
粉体などの粒子系では高密度状態で非結晶の固体状態へ変化するジャミング転移が発生する。こうしたジャミング転移に関して、剛性率の発生に関する理論的な理解を行った。また、関連現象として、粉体中における乱流的な振る舞いと粉体レオロジーにおける粒子形状の効果に関してシミュレーションによる研究を行った。 特にジャミング転移点近傍における粉体の剛性率に関しては、粒子間に発生する静止摩擦の影響を詳細に調べた。従来の研究においては、特にシミュレーションにおいて線形剛性率だけに着目し、わずかな摩擦の導入で剛性率が不連続に変化するという報告がなされていた。しかし、こうした特異性は素朴な観点からは理解しがたいものがあり、実際の実験との対応も良くなかった。本研究ではこうした点を踏まえて、剛性率を非線形応答領域を含める形で調べることで、ひずみと摩擦係数の非可換な極限操作の結果として、こうした特異性が現れることを発見した。この結果から、特に実験で測定するようなプロトコルにおいては、こうした特異性が大きな影響を与えないことを示している。 また、これまで知られていた粉体乱流の振る舞いを高密度状態に拡張し、特にジャミング転移点近傍において乱流的な振る舞いに臨界性が現れることを発見した。この結果から乱流状態を特徴付けるエネルギースペクトルにある種の臨界スケーリングが成立することがわかった。さらに、楕円体や棒状の粉体粒子のシミュレーションを実行し、そうした粒子形状がジャミング転移点近傍でのレオロジーに質的な変化をもたらさないことを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題においてはジャミング転移点近傍での剛性率、ジャミング転移の第一原理的計算、ジャミング転移の関連現象の解明を目的としてる。特に転移点近傍での剛性率に関しては粒子間摩擦の影響を明らかにし、関連現象に関しては粉体の乱流的な振る舞いとレオロジーに関して大きな進展があった。第一原理的計算に関しては公に公表している進展はないが、共同研究者との研究体制を立て直しているところであり、全体としては概ね計画通りの進行をしている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は特に粉体の剛性率と関連現象としての粉体雪崩に関する研究を進める。これらの研究は密接な関連があり、実験の研究者も含めて、応用的な部分も視野に入れながら進展を図る。また、関連現象として新たに粉体層でのクレーターの研究を実験家とともに立ち上げており、そのジャミング転移点近傍のレオロジーの理論を応用した発展を試みる予定である。
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