研究課題/領域番号 |
25800223
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岡山光量子科学研究所 |
研究代表者 |
茂木 康平 岡山光量子科学研究所, その他部局等, 研究員 (30583033)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 量子可積分系 / 非平衡ダイナミクス / 表現論 / 数え上げ幾何 |
研究概要 |
今年度は非平衡ダイナミクスへの量子可積分系を用いた解明に向けて、非対称単純排他過程や、ゼロレンジプロセスなどの可解確率過程を特殊な点において含むスピン系とボソン系の量子可積分系の代数解析的研究を行った。特に非平衡ダイナミクスの定式化において必要となる波動関数などの分配関数について、表面上は関係ないと思われた別の数学の分野との思いがけない関係を見出した。 まず、波動関数が、数え上げ幾何におけるK理論のSchubert多様体の構造層を表すGrothendieck多項式に他ならないことがわかった。また、この等価性を利用し、Grothendieck多項式に関する様々な表現論や組み合わせ論の結果を、量子可積分系の代表的な手法である量子逆散乱法を用いて証明した。特にCauchy公式やLittlewood公式が状態ベクトルのスカラー積の行列式表示の帰結として導出された。また直交性がBethe方程式を用いて特徴づけられることを見出した。この他にも、3次元溶解結晶模型を導入し、その分配関数が2次元と3次元Young図形の数え上げ母関数を示した。 本年度で得た結果は、量子可積分系や非平衡確率過程などの統計力学の分野が、数え上げ幾何と深い関わりがあることを示している。数え上げ幾何の背後にはゲージ理論が潜んでいることが多い。また、グラスマン多様体が出現するため、未知の古典可積分系もあると思われ、今後の更なる展開が見込まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では量子可積分系による非平衡ダイナミクスの定式化に向けて波動関数等の代数解析的研究を行い、数学の他の分野との意外な相互関係があることがわかった。数理物理の非常に豊かな世界の一部であると予想され、今後の発展性を再確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度では、非平衡ダイナミクスの定式化に必要な量子可積分系の代数解析的研究を行った。本結果の応用として非平衡ダイナミクスの研究を行う。例えば長距離相互作用の非平衡系のダイナミクス等への応用を現在行っている。また、可解確率過程と数え上げ幾何の関係をA型以外のグラスマン多様体の場合にも見出す。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画していた研究打ち合わせや物品の購入等の資金を、研究分担者として頂いている別の科研費から支出したため、当該助成金が生じた。 海外での研究会、サマースクールや、研究打ち合わせでの当該助成金の使用を計画している。
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