研究課題/領域番号 |
25800231
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
田邊 健彦 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 研究員 (30613989)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光格子時計 / イッテルビウム |
研究概要 |
本研究では、申請者所属のグループが世界で初めて開発した「イッテルビウム(Yb)光格子時計」について、現在の主な不確かさ要因である、黒体輻射シフトに起因する不確かさの軽減のため、原子を取り囲む環境温度のin-situ(その場)測定を目的としている。時計遷移の上準位からn(主量子数)の値が15~40のRydberg状態への遷移周波数の測定により、環境温度を求める。これは他の理論グループにより提案された環境温度の測定法であり、本研究で実際にこの手法の実証を目指す。 実際に高精度な環境温度の測定を行うためには、冷却・捕獲する原子数を増大させることが極めて重要である。そこで、Yb原子の冷却と捕獲に必要な波長399nmの光源を製作した。399nmのレーザー光の大強度化に伴い、冷却・捕獲できる原子数も増大する。波長798nmの外部共振器半導体レーザーの光をテーパードアンプに入射し、約2Wまで増幅した後、ボウタイ型光共振器中に設置したPPKTP結晶を用いた第二次高調波発生により、約100mWの出力の399nmのレーザー光を得た。これまでは、本研究グループのYb光格子時計では、波長399nmの外部共振器半導体レーザーを399nm光源として使用しており、その出力は約50mWであった。これは用いる半導体レーザーの性能の限界である。しかし、今回は第二次高調波発生による方法を採用することにより、従来の約2倍の強度の光源の開発に成功した。大強度の399nm光源の開発に成功したことは、本研究の遂行における重要な一歩である。今後はこの光源を用いて、Yb原子MOTを生成し、さらにRydberg原子生成に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたRydberg原子生成用の光源の開発上記のように、従来の約2倍の強度のYb原子の冷却と捕獲に必要な399nm光源を製作した。これにより、従来より捕獲原子数が従来より増大することが期待できる。原子数の増大は、今後の本研究の遂行において大いに有益である。目的の環境温度測定のために必要な、Rydberg原子生成用の光源は、最適な方法を目下検討中である。この光源を完成させることが次の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、製作した399nm光源の性能を評価するために、Yb原子MOTを生成する計画である。具体的には、Ybの放電セルを用いて位相変調分光を行い、光源の周波数を安定化してMOTを生成する。これと並行して、Rydberg原子生成用の光源の開発を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
Rydberg原子生成用光源システムが完成に至らず、実際の分光実験を行えなかったため、次年度使用額が生じた。 Rydberg原子生成用光源システムを構築するための光学系(非線形光学素子やテーパードアンプ)や、電子機器(半導体レーザーとテーパードアンプの駆動用電流源、および温度調節器)のために研究費を使用する計画である。
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