細胞の変形などのダイナミクスをソフトマター物理の観点から理解する為には、化学的な刺激に対するソフトマターメソ構造体の応答を理解することが不可欠である。本研究では化学刺激により膜分子の幾何学的形状が変化することを基盤とした膜変形ダイナミクスの解明を試みた。その結果、アニオン性脂質を含むモデル生態膜に水酸化物イオンを含む化学刺激を与えると、膜面上での孔開閉を制御できることが分かった。さらにこの孔形成はアニオン性脂質と水酸化物イオンの相互作用による膜面積収縮に起因することを明らかにした。これは、生命機能の制御機構を化学場によるソフトマターの非平衡構造形成という観点から明らかにする為の第一歩である。
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