研究課題/領域番号 |
25800235
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
畝山 多加志 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (10524720)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高分子 / 粗視化 / 高次構造 / ブロックコポリマー |
研究概要 |
ブロックコポリマーミセルの高レベル粗視化シミュレーションの実現に向けて、既存の高レベル粗視化モデルである RaPiD モデルに基づいたモデル化の検討を行った。また、粗視化モデルとの比較やパラメータ決定のため、既存の連続場モデルの性質の再検討を行った。これらの検討の結果、RaPiD 型モデルに基づくブロックコポリマーミセルの高レベル粗視化が可能であることと、粗視化レベルの低いモデルとの比較によって一部のパラメータを決定することができる可能性が高いことがわかった。これらの成果に基づき、現在実際のシミュレータ実装に向けて研究を継続している。 また、最近の研究より、結晶性高分子の粗視化モデルを考える上で、延伸した高分子試料を高温下にさらした際の熱収縮挙動から重要な知見が得られることがわかってきた。そこで、熱収縮挙動を系統的に解析し、モデル化の際に有用な情報を得るため、高密度ポリエチレンの熱収縮実験を行った。実験の結果から、高密度ポリエチレンの熱収縮挙動は主に非晶高分子鎖の形成するネットワークの持つエントロピー弾性によるものであることがわかった。さらに、収縮を阻害する原因が破砕した結晶ラメラ構造 (クラスタ構造) のジャミング的振る舞いであることを強く示唆する結果が得られた。これらの結果に基づけば、延伸した結晶性高分子は運動性の極めて低い運動単位がゴム的なネットワークで結合されたものとみなすことができる。このような考え方は既存のモデルではなされておらず、本研究で得られた実験結果は高レベル粗視化モデルを構築するための新しい基本描像であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の研究により、ブロックコポリマーミセルを高レベル粗視化モデルで表現するための手法を統計力学的に妥当な形で定式化できた。これは当初の目的の通りに高次構造を基本単位とするものであり、シミュレーションの大幅な効率化が期待できる。しかしながら、現在のところまだシミュレータの作成までは着手できておらず、実際にシミュレーションを行ってその妥当性を検証できていない。 一方、当初の予定では発展的なものと考えていた結晶性高分子の粗視化モデル構築について、理論を考える上で非常に興味深い実験結果が得られた。これは今後の粗視化モデル構築に大いに貢献するものであると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた結果に基づき、ブロックコポリマーミセルの高レベル粗視化シミュレータの開発を行い、ブロックコポリマーミセルのシミュレーションを行う。シミュレーション結果を既存のモデルや理論と比較することで、本研究で開発した手法の妥当性の検証やさらなる改良を行う。 結晶性高分子の熱収縮挙動については引き続き実験的な側面からの検証をすすめる。また、ブロックコポリマーミセルのシミュレータ開発と平行して、結晶性高分子系の粗視モデルの開発を進める。両者の共通点や相違点を検証することで、シミュレータの汎用化やモデルの共通化、個々の系に対してモデル上重要な因子についての検討を行う。
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