昨年度までに、当初の予定から対象とする系を若干変更し、結晶性高分子の熱収縮挙動と中程度に発泡した高分子発泡体の圧縮挙動を記述するための粗視化運動モデルの構築を進めてきた。本年度はこれらの研究を引き続き行うと同時にブロックコポリマーミセル等の当初計画としていた粗視化運動モデルの構築を進めることを計画していたが、高分子発泡体について特に興味深い結果が得られたため、対象を高分子発泡体に集中して研究を行った。中程度に発泡した高分子発泡体では、発泡体内の気泡のサイズや壁の厚さ等に分布がある。これらの分布のために発泡体のセルの強度が分布を持ち、圧縮時の特性、特にセル構造の崩壊に大きく影響することを見いだした。セル構造の不均一生を考慮したモデル化を行うことで高分子発泡体の圧縮挙動を説明することに成功した。また、発泡体の写真から画像解析によってセルサイズの分布を求め、圧縮特性をモデルから予測した。得られた圧縮特性は実験値と同様の振る舞いを示しており、高分子発泡体の構造と圧縮特性を関係づけるための基礎的な知見が得られた。
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