高分子の結晶化過程において、直接結晶核が生成するモデルとは別に、準安定中間相を経由するモデルが提案されている。この準安定相の存在について調べるために、拘束空間下と高圧下での結晶性高分子の振る舞いを調べた。また、常圧下での高分子および低分子液晶の成長速度についても調べた。 空間拘束媒体として用いたメソポーラス内に結晶性高分子であるポリブチレンテレフタレート(PBT)を、閉じ込め結晶化させ、その融解挙動について用いて調べた。その結果は、バルク中の結晶化挙動と同様多重融解挙動が観測されたが、その割合が異なった。その原因として、昇温過程における再結晶化の速度が、空間拘束を行うことにより制限されたと考えた。 室温・常圧下でガラス状態から結晶化させたシンジオタクチックポリプロピレン(sPP)における、様々な圧力下での融解過程について実験を行った。その結果、高圧下で形成された結晶のサイズの温度依存性は、いずれの圧力についてもある温度(Tx)で変化した。また、その温度依存性から平衡融点(Tme)も見積もった。TxとTmeは圧力が高くなるにつれて高くなるが、その差は小さくなっていくことがわかった。これは我々の提案する中間状態を経由する結晶化モデルで説明できる。 さらに、常圧下でのPBTとsPPの球晶の成長速度についての実験を行った。その結果、成長速度は大きく分けて3つの温度域に分けることができた。高温領域では溶融状態から直接結晶化が進行し、中・低温領域では中間状態を経由する結晶化が進行していることがわかった。 また、低分子の液晶である4-シアノ-4'-プロポキシビフェニル(3OCB)について、熱量測定および結晶成長速度の測定を行った。この物質の特徴は結晶の融点がアイソトロピック-ネマチック(I-N)転移よりも高いことである。3OCBの結晶成長速度がI-N転移を境に変化することがわかった。
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