研究課題/領域番号 |
25800237
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉元 健治 京都大学, 学際融合教育研究推進センター, 特定准教授 (00645278)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ブロック共重合体 / 誘導自己組織化 / シミュレーション / DSA |
研究概要 |
本研究の目的は「次世代の半導体製造プロセス材料として期待されているブロック共重合体の半導体基板上での誘導自己組織化(Directed Self-Assembly, DSA)について数値計算を行い、基板とブロック共重合体との界面で生じる欠陥パターンのダイナミックスについて解明する」ことである。 平成25年度は当初の予定通り、「半導体基板上でのジブロック共重合体の自己組織化(特に欠陥パターン生成)を大規模かつ動的にシミュレーションできる手法」の開発に着手した。具体的には、ブロック共重合体の密度場を変数とするOhta-Kawasakiモデルを用い、その密度場の時間発展式を並列化計算できるプログラムを作成した。また、バルクのエネルギー式に新なペナルティー項を加え、基板表面とジブロック共重合体との界面相互作用を簡易的に表現した。モデルパラメータの値は実験データ(断面SEM画像)との合わせこみによって決定した。 結果として、まず計算負荷の大きな三次元シミュレーションでも短い時間で結果を得ることが可能となった。厳密モデル(自己無頓着場理論)を用いた場合、数時間から数十時間かかる3次元シミュレーションでも、我々のモデルでは数分程度で計算結果が得られた。また、シミュレーションから得られたジブロックコポリマーの相分離形状について、厳密モデルと比較検証した結果、基板との影響によって複雑な欠陥構造が生成される場合でも、厳密モデルとの整合性がとれることが確認できた。これらの研究成果は、2つの国内学会と2つの国際学会で発表を行い、国際学会誌と学術論文誌にも投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年の研究目標は「半導体基板上でのジブロック共重合体の自己組織化(特に欠陥パターン生成)を大規模かつ動的にシミュレーションできる手法を開発すること」であり、この目標は既に達成できている。当初の研究計画に従い、1)Ohta-Kawasakiモデルをベースに簡易化モデルを構築し、2)動的シミュレーションの高速に行うための並列化プログラムの開発を行った。モデル構築も並列化プログラムの開発も順調に進んだため、2年目に予定していた「基板表面とジブロック共重合体との相互作用パラメータの数値」についても、すでに実験データとの合わせ込みによって決定した。これらの研究成果については、すでに2つの国内学会と2つの国際学会で発表を行い、国際学会誌と学術論文誌にも投稿している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は当初の予定通り、昨年度に構築した簡易化モデルを用いて「欠陥パターンの動的挙動」について解明する予定である。まず時系列の実験データ(SEM画像)を用いながら、シミュレーションの逐次計算で用いる時間幅の値を決定する。この実験データはすでに企業から提供してもらっている。次に、ジブロック共重合体の誘導自己組織化に関する動的シミュレーションを行い、欠陥パターンの生成過程や安定性について解明していく。さらに、欠陥パターンの生成要因として考えられる、ジブロック共重合体の膜厚、ジブロック共重合体と基板との界面相互作用、基板の形状等についても、その欠陥生成への影響について詳しく調べていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)「ワークステーションの金額変更」当初予定していた計算機より安価で高性能なものが販売されたので、そちらを購入した。2)「デスクトップ、グラフィックスカード、ディスプレイの購入延期」当初別々に購入する予定であったが、新しいMac Pro(Apple)が高性能グラフィックスカードを2枚搭載していて値段も安かったので、Mac Proを購入することにした。しかし、発売予定が大幅に遅れ、初期出荷が平成26年2月以降となったため、3月までには購入できなかった。3)「海外出張の延期」平成25年夏にニューヨーク州立大学アルバニー校へ共同研究の打ち合せに行く予定であったが、共同研究の契約書作成に予想以上の時間がかかってしまい、年度内に訪問できなかった。4)「スパーコンピュータ使用料の繰り越し」平成25年度は京都大学スパーコンピュータ共同研究制度「若手研究者奨励枠」に採択されたので、スパコンの利用負担金が免除された。 次年度使用額(約133万円)に翌年度分(70万円)を加えた助成金の使用計画を以下にまとめる。 1)スパーコンピュータの平成26年度使用料、30万円(平成26年4月)、2)Mac ProとDisplay(Apple)の購入、約60万円(平成26年5月)、3)ニューヨーク州立大アルバニー校で共同研究打ち合せ、約35万円(平成26年7月)、4)MRS国際学会(ボストン)で発表、約35万円(平成26年12月)、5)SPIE Advanced Lithography学会で発表 (カリフォルニア)、約35万円(平成27年2月)
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