前年に引き続き、フォッカープランク方程式に基づいて回転電場や単純せん断流におけるキラリティおよび永久ダイポールを持った粒子の移動度の計算を行った。この粒子の移動度は、キラリティ(粒子の持つ右や左の程度)に応じて符号が異なり、粒子の分離を可能とする。本研究では、回転電場において、永久ダイポールを持つ粒子の運動に関する理論解析を行った。そして、プロペラ状粒子の粒子の構造(捩れの角度)と電場、せん断流による移動度の見積もりをサイズが小さく、ブラウン運動の効果が大きい際に行った。電場に関しては、電場の2乗の効果で、分離が可能であることが分かった。また、電場やせん断流の効果が温度に比べて強い場合は、コンピュータシミュレーションにより算出した。 当初の目標は、これらの計算をすべてコンピュータシミュレーションで行う計画であったが、理論解析で、研究を進めるように、方向性を変更することになった。目的は異なっているが、十分な成果が得られていると考えられる。 これらの結果は、Physics of Fluids誌に掲載された。また、Physical Review Fluids誌にも論文を投稿中である。 また、永久ダイポールでなく、電場でダイポールが誘起される場合に関しても、計算を始めた。この場合は電場の4乗の効果で分離の移動度が見積もられる。永久ダイポールに比べて誘起ダイポールの場合はテンソルの階数が増える計算となる。しかし、分子レベルよりはるかに大きい結晶サイズなどの場合は、電場あるいは、磁場に応答するのは誘起ダイポールの効果のほうが支配的な場合も大きいと考えられる。今後もこのような計算を行っていきたいと思っている。 複雑な形状をした粒子の外場における振る舞いは、まだ計算するべき問題が残っている。今後は、本研究で得られた知見をもとに発展させたいと考えている。
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