研究課題
若手研究(B)
「含水シリケイト始原核脱水モデル(以降,「脱水モデル」と呼ぶ)」を用いた数値解析に必要な計算機環境の構築と,既存の熱構造進化プログラムの改良を行った.本研究の主力となる計算ワークステーションを購入し,既存の低廉なパソコン端末と高速なネットワークハブを介した計算環境を整備した.脱水モデルの数値シミュレーションプログラムについては,先行研究で使用した一次元球対称系計算コードをベースに,含水シリケイトの脱水に伴うレオロジー変化や反応熱の発生,放出水の移流熱輸送,体積増加など脱水過程に伴って生じる様々な現象を組み込んだ数値シミュレーションプログラムへと改良を行った.また,本モデルと計算機環境を用いた予察的計算も行った.本研究の解析対象である木星衛星ガニメデとカリスト,および土星衛星タイタンが持つ衛星半径と平均密度の範囲で45億年の内部温度の変化を追跡し,内部の脱水度と金属成分の分離度(金属成分の共融点との比較で判断)を評価した.その結果,3衛星のサイズと密度の僅かな違いが内部の到達温度を変えて内部脱水度に大きな違いを生み,金属核を持つ(金属成分が岩石から大きく分離した)ガニメデと金属核を持たないカリストの作り分けを再現することに成功した.また,衛星半径と平均密度が2衛星の中間に位置するタイタンは,与えるパラメタ(氷粘性率など)によって最終的な内部分化度が大きく変わる領域にあることが分かった.
2: おおむね順調に進展している
2013年度初頭に生じた急激な円高の影響によりワークステーションの価格が急騰したため,当初予定していたものより性能を下げ安価なワークステーションを購入する必要が生じたが,数値モデル開発の段階では大きな影響はなく,現状では遅滞なく研究が進展している.
現状はおおむね順調に進展しているので,今後も計画通りに研究を推進していく.上に述べた,申請時よりも性能の低いワークステーションを用いている影響は,2014年度以降に多数のパラメタスタディを行う際に多少生じる可能性があるものの,計画の全体像に修正を迫るようなインパクトはないものと見込んでいる.
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Transactions of Japan Society for Aeronautical and Space Sciences, Special Issue of ISTS
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Transactions of the Institute of Natural Science, Senshu University
Planetary People
巻: 22 ページ: 146-151