研究課題
本年度は、地震波動場の時間変化から抽出された地震波速度変化の物理的意味について、理論的に考察した。まず最初に、これまでになされた理論的研究を整理し、静的な応力変化にともなう地震波速度変化は、フックの法則では微小なために無視されている有限ひずみの効果、すなわち非線形な弾性変形によって主に生じることを確認した。静的な応力変化にともなう弾性波速度変化は、金属などよりも岩石など粉体のほうが大きいが、これは、有限変形に対応する高次弾性定数の絶対値が岩石のほうが大きいことによるものである。では、このような高次弾性定数の違いの物理的実体は何であろうか?本研究計画では、高次弾性定数が粉粒体の半径とその接触半径の比によって支配されるという理論的考察が妥当であることを確認した.しかし,地下の岩石の粉粒体の半径やその接触半径を直接計測する方法はなく、この理論的考察が実際の地球内部の物質にあてはまるかどうかの展望はない。地震波速度は、静的応力変化だけではなく、地震波による動的な応力擾乱によっても変化する。本研究では、地震波によるクラック生成が地震波速度を変化させているとの仮説に基づき、クラック生成による地震波速度変化を理論的に考察した。このように、本研究により観測された地震波速度変化を解釈するための理論的な道具は整ったが、観測された地震波速度変化の静的応力および動的応力による貢献を切り分けることが難しいなど、依然として、解決すべき問題は残されている。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件)
Frontiers in Earth Science
巻: 3 ページ: 42
10.3389/feart.2015.00042
Seismological Research Letters
巻: 86 ページ: 901-907
10.1785/0220150030