原始惑星系円盤にある原始惑星は、惑星周りのガスの流れを変化させるだけの重力を有している。この変化により、惑星の両側にガス密度の濃い腕状の密度波が生じる。密度波からの重力は惑星の軌道速度にブレーキをかける方向に働き、その結果遠心力が弱まり中心星重力によって惑星の軌道は内側へ変化する (これをタイプ1惑星落下という)。内側への移動速度は地球質量程度の時にもっとも大きいことが過去の研究から評価されている。この内側移動は“原始惑星は誕生後中心星に落ちて消える“可能性を意味しており、惑星がどこで作られ、今の軌道はいつ決まったのかという惑星系形成問題とリンクしている。ゆえに、この軌道変化の物理を詳細に知ることは惑星形成論の根幹に関わることである。 先行研究ではタイプ1惑星落下が常に内向きなのか、それとももっと多様なのかという問題意識の下で様々な効果が吟味されてきたが、基本的に内向き移動を予測している。本研究ではダストがガスと相互作用してガス流れを変化させ、ガス密度の濃い領域を薄め、結果として惑星の内側移動を軽減するという仮説を立て、タイプ1惑星落下の挙動を調べた。この仮説は先行研究では調べられておらず、かつ惑星誕生時の内惑星領域は遠方から落ちてきたダストによってそれなりに満たされている。そのため、この仮説は不自然な状況を考えなくとも、タイプ1惑星落下のふるまいを変える可能性がある。 申請者は最初に惑星、ガス、ダストの3体相互作用を入れた精緻な数値計算コードを構築した。数値計算から、ガス/ダスト比やダストの大きさが増すと、共回転トルクが大きくなり、移動方向が外向きに変化することがわかった。さらに、密度波から惑星にかかる正味の重力も弱まることが観測された。この弱まりはダストとガスとの相互作用によりガスが外に動くことで内側の密度波は惑星に近づき、外側の密度波が遠ざかったことが原因である。
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