本研究は、時間スケールの長い現象であるマントル熱輸送過程を考慮したコア熱進化と、その熱進化の結果得られたコア内部構造を考慮した短時間スケールのダイナミクスである地球ダイナモによって、コアーマントル結合系の進化・ダイナミクスの議論を行った.その結果、コアーマントル熱進化モデルから、コアーマントル境界直下に厚さ数100kmから1000kmの安定成層構造が期待できることが示唆された.この成果について、地球電磁気惑星圏学会とAGUで口頭発表、EGUでポスター発表を行った.また、その示唆は地震波速度解析によって明らかにされた外核最上部の速度異常構造と調和的であると判明した.そのような安定成層構造がコアダイナミクスに与える影響を調べるために、熱的成層構造を考慮した地球ダイナモシミュレーションを広パラメータ空間(磁気プラントル数ならびに成層の厚さ)で行った結果、数100kmから1000kmにわたる熱的安定成層では低磁気プラントル数において、安定ダイナモ解が得られない結果となった.これは、地球コアの特徴的なスケールを考慮すると、地震波解析などで推定されている外核最上部の速度異常の成因は熱的な成層過程ではなく組成的な成層過程であると示唆することができた.この成果については、論文発表を行っている.これらの知見を確認するために、組成的な成層構造の影響を考慮した地球ダイナモシミュレーションを用いて調べた結果、地震波速度構造を説明するような組成成層は初期地球分化過程や内核形成時の軽元素放出によって形成されたのではなく、コアーマントル化学結合によるケイ酸塩と金属鉄との分配反応によって形成された可能性が示唆された.この成果について、EGUにおいてポスター発表を行った.
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