研究課題/領域番号 |
25800257
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
桑野 修 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 研究員 (30511969)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 断層 / 粉体 / 摩擦構成則 |
研究概要 |
地震とは破壊と摩擦不安定をともなう断層の高速すべりであり、そのダイナミクスは断層の摩擦法則によって支配されている。断層は過去の断層運動で生成した粉砕物・断層ガウジを含んでいる。したがって、粉体の摩擦不安定をその構成則から理解することが重要である。臨界滑り量は破壊エネルギーを支配する主要因であるが、最近の実験では伝統的な低速滑りの実験でみいだされるmm以下のものより何桁も大きな臨界滑り量をもつ現象が発見されている。我々は、これまでにレオメータを改造した回転式粉体剪断試験機を用い、垂直応力を低く保つことで摩擦発熱による粒子自体の物性変化を極力排した実験で、高速すべりにおいては多体粒子相互作用に支配される新たな摩擦メカニズムがあることを示してきた。本年度は速度急変時の垂直応力の制御を改善した回転式粉体剪断試験機を用いてすべり速度1-3m/sの範囲の高速域での速度ステップ試験を実現し、粉体層の高速すべりにおい10mクラスの長大な臨界滑り量をもつ摩擦の緩和を見いだした。この摩擦緩和はすべり速度の急減速時も加速時と対称な応答を示し、それに対応して粉体層厚も変化しており、多体粒子系の構造変化が関与していると考えられる。速度急変に対する瞬間的応答の大きさは粉体層の厚みにほとんど依存しないが、緩和量は層が厚いほど大きいことが分かった。したがって層全体にわたる多体粒子系の応答が緩和過程を支配している可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粉体層に剪断を与える壁の形状が緩和過程に影響を与えることが分かった。剪断壁形状をコントロールするため剪断セルの再設計を行った。そのため、年度当初の課題であった振動測定については次年度の課題とした。 剪断壁形状依存性の定量化はDcのスケール依存性の解明につながると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
粉体層に剪断を与える壁の形状が緩和過程に影響を与えることが分かったので、剪断壁形状をコントロールするため剪断セルの再設計を行った。そのため、初年度の課題であった振動測定については次年度の課題とした。 今後は粉体せん断層内部で発生する振動を測定し、画像解析と組み合わせて緩和過程を支配する微視的物理メカニズムの解明を目指す。そのために回転式摩擦試験機の試料部に加速度ピックアップを取りつけて振動強度を測定するシステムを構築する。本装置での振動測定の前例が無く、装置全体の共振周波数も影響するはずなので、試行錯誤しながら測定システムを構築していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
粉体層に剪断を与える壁の形状が緩和過程に影響を与えることが分かったので、剪断壁形状をコントロールするため剪断セルの再設計が優先的に必要になった。そのため、初年度の課題であった振動測定については次年度の課題とした。 2年度目以降は様々な剪断壁形状の剪断セルの作成と同時に粉体層の振動強度を測定するシステムを構築する。
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