研究課題/領域番号 |
25800262
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
筆保 弘徳 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (00435843)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 回転水槽実験 / 台風 / 内部コア構造 |
研究概要 |
本研究は、台風構造を模擬する実験条件で行う回転水槽実験を用いて、台風中心付近の構造変形メカニズムを力学的に解明することを目的としている。2つの課題を設定していて、課題1は回転水槽実験のなかで1つの浮遊粒子を3次元的に追跡すること、課題2は感度実験を行うことである。初年度の前半は、回転水槽実験装置の整備や、実験環境の構築に多くの時間と研究費を費やした。サーモグラフィーの選定には、複数の業者からデモンストレーションをしていただき、本研究に最も適したものを購入した。粒子追跡の解析に用いるPIV(Particle Image Velocimetry)ソフトの本研究への導入も行った。実験整備については概ね順調である。 新しく整備した画像処理ソフトを本研究に適応・検証するために、まずは台風構造の実験条件ではなく、一般的な実験条件で課題2を進めた。感度実験として、温度差・回転速度・水深など実験条件を変えた水槽実験を約100回以上実施した。そして、それらの結果をPIV解析ソフトを用いて定量化を行った。この新技術を用いることで、これまで分からなかった回転水槽実験の定量的な理解や複雑な波動の考察ができるようになった。これらの結果は、2013年度秋季日本気象学会で発表を行い、多くの研究者から問い合わせやご助言を頂いた。そして、次年度の前半でそれらの結果を整理して学術論文に提出できるように準備している。さらに、これらの室内実験や数値シミュレーションの初期的な結果を、2014年度春季日本気象学会にて研究発表を予定している。また、本研究代表者がコンビーナとなり、2014年度秋季日本気象学会では、「回転水槽実験」のスペシャルセッションが開催されることになった。以上のように、研究実績は着実に出ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
回転水槽実験の装置の環境整備は概ね順調である。そして、課題2の回転水槽実験の感度実験研究は、実験設定は台風構造を模擬したものではないが、約100回以上も実施している。サーモグラフィーやPIV解析ソフトの導入により得られる定量的なデータは、過去の回転水槽実験だけでは得られなかった新たな結果を出している。この結果をまとめて2013年度秋季日本気象学会で発表を行ったところ、大きな反響があった。回転水槽実験を用いてきた研究者だけでなく、授業教材として利用している教育者からも、優れた教材に成る可能性を示唆して頂いた。すでに出ている実験結果を整理し、日本気象学会誌「天気」に学術論文として提出できるように執筆中である。また、2014年度秋季日本気象学会のスペシャルセッション「回転水槽実験」で行うことが決まり、本研究代表者がコンビーナとして準備を進めることになった。 一方、課題1に関しては、1粒子追跡解析での導入が遅れている。予定していた1粒子追跡実験に用いる蛍光塗料マイクロカプセルが、実験を試みてもうまく機能しないという問題が起きている。その原因を追求しているところであるが、新たに購入をすることも検討している。全体として、課題1にやや遅れがあるものの、課題2は予想以上に結果がでていて、研究達成度は高いと考えられる。今後は、課題1の問題について急ぎ対策をとりながら、課題2の結果の整理をさらに進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間2年目は、課題1の研究を中心に進める。1粒子追跡実験の整備を急ぎ行う。1粒子追跡実験に用いる蛍光塗料マイクロカプセルがうまく機能しない原因を追求しながら、新たな購入も検討する。蛍光塗料マイクロカプセルは水槽実験の浮遊粒子となるため、それを3次元的に追跡することで、流体内部の二次循環を観察する。 課題2も、課題1と平行して遂行する。これまでは、新しく整備した画像処理ソフトを適応・検証させるための予備実験として、台風構造を模擬する実験条件ではなく、従来の実験条件を何度も繰り返してきた。今後は、台風構造に合わせた実験条件で回転水槽実験を繰り返す。まず、台風壁雲の非軸対称構造に対応した結果を得る。そして、実験設定を変えた実験結果を蓄積し、再現される傾圧不安定波動の発生・変形と実験設定の関係をレジームダイアグラムにまとめる。その感度実験は、2~3ヶ月をかけて100回程度を予定している。 これらの研究成果は、すべて学術論文にまとめる。まず、すでに初年度で得られている実験結果をまとめて、日本気象学会誌「天気」への投稿を行う。2年目で得られた実験結果も、学術論文にまとめて投稿できるように準備をする。さらに、2014年度春季気象学会でも、本研究の成果の発表が決まっている。また、2014年度秋季日本気象学会では、「回転水槽実験」のスペシャルセッションが予定されており、コンビーナとして準備している。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定通り研究費を使用しているが、完全にゼロになるまでは購入しなかった。 回転水槽実験に必要となる備品の購入を計画している。室内実験の備品は、既存の故障した装置から利用できるパーツはそのまま利用するなど、コストを抑えた購入を計画している。1粒子追跡実験に用いる蛍光塗料マイクロカプセルは、原因によっては、新たな購入する。また、膨大なデータから、PIVソフトにより定量化計算をさせるコンピュータの購入を考えている。そして、研究成果を蓄積するためのデータストレージも随時購入をする。現在の高感度カメラだと、実験結果に影響が出る不具合が見つかったため、新たな撮影用カメラを購入する。そして、研究結果を発表するために、学会参加と科学論文雑誌の投稿に研究費を使用する。
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