| 研究概要 |
1．f平面浅水系における回転渦糸対からの重力波放射の理論的研究および数値実験
本研究では, まずf平面浅水系において, 回転渦糸対からの自発的な重力波放射を調べた. まず数値実験では, 無限領域の高速スペクトル法(ISPACK)を用い, 重力波の定量的調査を可能にした. この手法は, 円盤座標の浅水方程式系を球面に射影し, 球面のスペクトル展開を用いるもので, 中心の渦領域にグリッドを密に配置し, 遠方の重力波伝播領域で効率的に重力波を散逸させ, 境界の影響を取り去ることができる. 理論的研究では, グリーン関数を用いた数理解析手法により, 自発的な重力波放射の遠方場を解析的に導出した. このため, 解析解と数値モデルの相互比較を行った後に, 解析解を導出できない設定への拡張が可能になる. 本年度は, 解析解の導出及び数値モデル結果との比較を行い, 良好な結果を得た. 特に数値実験で得られた自発的重力波放射の高低気圧渦の非対称性について, 渦からの音波放射理論(渦音理論)を援用した拡張を行い, 解析解から説明が可能になった. 得られた成果は国内外の学会で発表を行ったほか, 原著論文として投稿準備中である.
同時に, 3次元での自発的重力波放射について, 繰り込み群を用いた理論的枠組みを構築し, 数値実験による検証も行った. 本結果も原著論文として投稿し, 受理に向けて改訂中である.
この他, 金星大気についての研究も推進し, 3編の原著論文が掲載された.
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数値計算および解析解の導出を完了し, 現在論文を投稿準備中である. 特に, 高低気圧の非対称な自発的重力波放射を理論的に説明した成果は重要であると考える.
また、3次元系での理論的枠組みと数値実験による検証も終え, こちらも現在, 原著論文として投稿, 改訂中である.
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| 今後の研究の推進方策 |
これまでに構築した数値計算の枠組みを用いて, 渦の併合, 分裂過程, 非対称な渦対などからの自発的放射を系統的に調べていく計画である. 同時に, ３次元系でのより現実的な渦的流れからの重力波放射についても, 数値実験, 理論的研究の両面からの調査を行い, 大気大循環へのインパクトも調査していく予定である.
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