研究概要 |
本研究では, 理論的考察を基に湿潤過程を含む支配方程式系を定式化し, 水物質の相変化に伴うエネルギー変化過程を加味した, 次世代のスタンダードとなる気象モデル(Large Eddy Simulation: LESモデル)を構築することを目的としている。この目的のため、まず(A)空気中に水滴の存在を陽に解く“空気+水滴”直接計算(Direct Numerical Simulation: DNS)モデルを構築し、LESよりも高精度の数値実験を行って擬似観測データを得ると共に、(B)理論的考察を基に既存LESモデルに湿潤過程を含めた定式化を行う。そして、(C)理論的考察・数値実験の結果から湿潤LESモデルを構築する。 昨年度は、数値実験のためのDNSモデルの根幹部分を構築し、定式化に必要な知見である「物理現象に対する格子幅の影響」を理論的・数値的に調べた。具体的には 1、“空気+水滴”DNSモデルの根幹部分となる、空気を解く直接計算コードを構築した。 2、水の相変化の影響が大きい気象現象である深い湿潤対流や台風が、格子幅によって構造が変化することを示し、現象を現実的に解くために必要な解像度を示した(Miyamoto et al. 2013, 2014 submitted)。 3、流体の方程式中の空間微分を離散化した系での線形安定性解析を行い、微分を有限差分で近似した離散系においては、微分形の式系で得られる解(波数)よりも高い波数が卓越することを発見した(Miyamoto et al. 2014 in preparation)。これは、これまで幅広く(定性的に)考えられていたものと逆の結果であり、目的(B)の定式化においても重要な知見となる。
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