研究課題/領域番号 |
25800266
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
宮本 佳明 独立行政法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 基礎科学特別研究員 (90612185)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乱流 / Large Eddy Simulation / 直接計算 / 相変化 |
研究実績の概要 |
本研究は、水滴の相変化が流れ場に与える影響を定式化し、次世代の気象モデルの基盤部分を構築することを目的とする。現在の気象モデルは、大気場を格子状に離散化し、格子内に含まれる水の密度(水滴の大きさや個数)を解く。即ち、格子内の水滴の大きさなどの分布の時間発展を考えているため、相変化による流れ場への影響は、格子幅よりも大きな空間スケールにのみ与えられる。現在の気象モデルでは格子幅が数km、次世代の気象モデルとして期待されるLarge Eddy Simulation(LES)モデルでも数100 m程度であり、相変化による流れ場への影響を全く含んでいないと考えられる。そこで本研究では、水滴の相変化による流れ場への影響を定式化し、既存のLESモデルに加えた“湿潤LESモデル”を構築する。具体的には、(A)“空気+水滴”直接計算(Direct Numerical Simulation: DNS)モデルを構築し高精度の数値実験を行う。(B)理論的考察を基に定式化を行って、(C)湿潤LESモデルを構築する。 昨年度までに、数値実験のためのDNSモデルを構築でき[目標(A)]、理論的考察[目標(B)]に必要な知見である「離散系で再現される物理現象に対する格子幅の影響」を理論的・数値的に調べた。 (1)“空気+水滴”DNSモデルの大部分を構築した。 (2)実現象として、水の相変化の影響が大きい湿潤対流や層積雲、台風に着目して、その現象が相変化を通して駆動する機構を調べた(Miyamoto et al. 2014, 2015a)。 (3)離散化した系での線形安定性解析を行うことで、理論的に解像度依存性の議論を行うことができることを提唱した(Miyamoto et al. 2015b)。この研究は目的(B)の定式化において重要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに(A)“空気+水滴”DNSモデルを構築して、現在このモデルを用いた数値実験を実行中である。申請書の順番とは逆に、定式化の前にモデル化を行ったのは、全ての数値実験に必要な時間が予想よりも多かったためである。これまでに、数値実験結果と室内実験・観測結果の比較から、構築したDNSモデルが現実的な計算を行っていることが検証できた。また、(B)理論的考察に必要な基礎的知見(離散系における現象の格子幅依存性)を得た。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、(A)の直接計算モデルを用いてパラメータを系統的に変化させた数値実験を行って擬似観測データを作成し、また、(B)理論的考察からの定式化を重点的に行う。ここで得られる式系と擬似観測データを基にして、水滴の相変化が流れ場に与える影響をパラメタリゼーション化する。そしてこのパラメタリゼーションを既存LESモデルに適用することで、本研究の最終プロダクトである湿潤LESモデルを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度末から来年度初頭にかけて、論文が受理される可能性があったため、その出版費用のために残額を次年度に継続した(2015年3月に受理, Miyamoto et al. 2015b)。
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次年度使用額の使用計画 |
論文の出版費用に使用予定。
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