研究課題
若手研究(B)
大気ブロッキングは,中緯度帯で1週間程度以上停滞・持続する巨大な高気圧であり,その持続性から異常気象と密接に関係している.一方で,ブロッキングの予測は一般に難しく,その予測可能性を発生から持続にわたって解明することは異常気象に関係する災害を防ぐ・減じるために重要である.今年度は事例解析による研究を行った.具体的には,ヨーロッパからユーラシア大陸まで広く異常気象をもたらした2010年夏のロシアブロッキングの持続において,そのメカニズムと予測可能性変動とを,ブロッキングと強く相互作用するストームトラック(移動性高低気圧)に注目して調査した.まず,メカニズム研究においては,大気大循環モデルを用いてストームトラックのブロッキング持続への寄与を定量的に調べ,その寄与が本質的に重要である結果を得た.次に,ストームトラックの強さの変動に注目し,その変動がロシアブロッキングの予測可能性変動と関係しているかを調査した.ここでも大気大循環モデルを用いて5日間の予報実験を行い,ブロッキングの持続期間中の予報誤差の変動を予測可能性変動の指標とした.その指標とストームトラックの強さとの相関を調査し,更に流跡線解析などを用いて偏西風の蛇行との関係などを調査した.結果,ブロッキングの予測可能性は,ストームトラックが強いほど高くなることがわかり,そのときに偏西風が蛇行する傾向にあることがわかった.
2: おおむね順調に進展している
ブロッキングの事例解析において,数値実験によるメカニズム研究と予測可能性研究の両方を行うことができたため.また,当初の研究計画での仮説と整合的な結果が得られており,今後予定通り事例を増やすことにより,結果を更に堅牢にできると予期されるため.
現在の事例解析の結果を論文化する作業を最初に行う.そこから,予測可能性研究の結果を更に確証していく.さらには,大気内部の現象だけでなく,ストームトラックの強さに関係する海洋の変動などに注目し,ブロッキング予測をより長くするための物理量を探す.そして,複数事例についての解析を行う,あるいは次年度のためにその準備をする.
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平成25年度「異常気象と長期変動」研究集会報告
巻: - ページ: 113-119
Proceedings of the 29th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice
巻: - ページ: 256-258
Annual report of the Earth Simulator Center
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
天気
巻: 60 (8) ページ: 681-690