研究課題
2014年9月にハワイ山頂に移設が完了した東北大学60cm望遠鏡に赤外ヘテロダイン分光器を実装することに成功した。11月には火星のCO2 non-LTE emission観測に成功し、3月には金星のCO2 non-LTE emission観測に成功することができた。いずれも本装置でないと取得することのできないユニークな成果であり、得られたデータをもとに、望遠鏡も含めた装置の性能評価・データSN評価を実施することができた。評価をもとに光学系の調整や運用方法の改善を行うことで惑星からの信号強度を3倍程度改善することに成功し、加えて、データ解析に必要なツール・リトリーバルモデルを準備し、そこから得られる物理量の導出精度を議論することができた。また、運用に必要なソフトウェア群を構築し、望遠鏡のガイドシステムを改善することで(CCDモニタカメラとTip-tiltミラーによるフィードバック機構、望遠鏡自体のガイド制御)、来年度のメタン本格観測に向けた準備を進める事ができた。さらに、メタンに絡む固層ー気層相互作用に関連する火星の二酸化炭素同位体の観測を、マウナケア山頂IRTF望遠鏡におけるNASA赤外ヘテロダインチームとともに実施した。以上の初期研究成果を2月の惑星圏シンポジウム等において報告した。現在、装置の性能評価に関する論文を準備中である。
3: やや遅れている
当初2013年11月を予定していた東北大学60cm望遠鏡の移設完了が稀少動物保護等の理由により2014年9月まで遅れた。それに伴い、1.8m鏡PLANETS望遠鏡の建設も遅延となり、現在2017年末建設完成予定で推進している。装置を実装する望遠鏡群の建設が上記の理由により大幅に遅れているものの、既に2014年9月にハワイ山頂に移設が完了した60cm望遠鏡に装置は無事に実装された。火星メタン観測は、時期がずれたために、太陽との離角の関係、火星と地球の相対速度および視直径の関係で本格観測は実施できなかったものの、金星・火星のCO2 non-LTE emissionの超高分解能観測に既に成功しており、想定通りの性能が発揮されている。開発した装置およびそれを用いた惑星観測はとても順調に進んでいる。
1.8m鏡PLANETSの完成が本期間内に間に合わないケースを考慮し、60cm鏡で本課題の目的を最大限に達成するため、2015年12月から2016年3月にかけて、火星と地球の相対速度が最大を向かえるメタン観測好機に集中観測を企図する。望遠鏡の運用時間を最大限に確保し、必要積分時間を十分に満たす観測を実施する。60cm鏡でも空間分解能を上げるため、今年度新たに開発したCCDモニタカメラとTip-tiltミラーによるフィードバック機構・望遠鏡自体のガイド制御を組み合わせ、シーイング等による空間分解能の劣化を最小限に抑え、メタン起源解明につなげる。加えて探査機Mars Expressとの連携により、空間分解能を補う相補的な観測を実施する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)
Icarus
巻: 245 ページ: 177-183
Proc. SPIE
巻: 9147 ページ: 1-13
doi:10.1117/12.2055877