研究課題/領域番号 |
25800276
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
鈴木 秀彦 立教大学, 理学部, 助教 (40582002)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 極中間圏雲 / 昭和基地 / ライダー / 南極 / 狭帯域化 |
研究概要 |
初年度(平成25年度)の成果として、極域の白夜期(夏期)に発生する極中間圏雲を光学的手法(ライダー)で精度良く捉えるために、ショットノイズの原因となる太陽光による昼間背景光を抑制する受信系システムを開発し、実用化することに成功した。背景光の抑制方法としては①背景光の自然偏光状態を利用し、送信レーザーと受信系の偏光面を同時に制御することによって、レーザーの散乱光(シグナル)以外の光を抑制する手法と、②受信系にファブリペロエタロンという光学素子を実装し、従来の干渉フィルターよりも1ケタ以上の狭帯域化を実現する2つの手法を組み合わせる方法を実証した。 ①の効果については、立教大学池袋キャンパスにおいて、口径10㎝の反射望遠鏡を受信系とし、出力1.25WのNd;YAGパルスレーザー(10Hz)を送信系とした簡易ライダーシステムを構成し、晴天時における背景光抑制効果を実証した。②の効果については、南極昭和基地にて稼働中の狭帯域発振レーザーシステムと同等の機種を保有する首都大学の協力を得て、同様の簡易ライダーシステムを構成し、晴天時の試験観測によって背景光抑制効果を実証した。さらに、研究代表者が第55次南極地域観測隊員として、平成25年12月中旬~平成26年2月上旬まで南極昭和基地に滞在し、上記システムをレイリー/ラマンライダーに実装し、極中間圏雲観測に適用した。その結果、これまで同装置では困難であった、白夜期(太陽高度>0度)における極中間圏雲の検出に数例成功した。 極中間圏雲は、極域の夏期にもっとも活発に発生する現象であるため、システムの狭帯域によって昼間観測を達成できたことは、極中間圏雲の連続観測にとって重要な前進である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画段階で設定した当該年度の目標課題①送信レーザーの偏光面制御手法実用化、②受信系の偏光面制御手法の実用化、③送信、及び受信系の偏光面同時制御手法の実用化については、研究代表者および研究協力者との連携により、国内での実験および試験観測によって達成することができた。その成果については、高知大学で平成25年11月2日~5日に開催された第134回 SGEPSS総会および講演会にて「ライダー送信および受信系の偏光面同時制御による背景光抑制効果の実証(鈴木他)」および「南極レイリーラマンライダー昼間観測用エタロンシステムの開発:気圧による光学的距離の調整(山本他)」の2件の報告を行った。さらに、当初2年目(平成26年度)に実施する予定であった極域での上記装置を実装した本観測については、研究代表者が第55次日本南極地域観測隊に参加する機会が得られたため、平成25年12月より平成26年2月上旬にかけて南極昭和基地において実施することができた。新システムを実装した観測の結果、これまでライダーによる観測が難しかった白夜期(=背景光強度大)という条件下で、極中間圏雲の検出に複数例成功した。 以上のように、本研究は当初計画よりも順調に実行されており、次年度(平成26年度)においては、南極昭和基地で得られた極中間圏雲データの解析および、成果物としてのまとめ作業が中心になる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの進捗から、本年度はレイリー/ラマンライダーによって得られた極中間圏雲のデータを、南極昭和基地にて稼働中の超高層大気関連の他機器によるデータおよび衛星データと統合し、極中間圏雲の発生メカニズムやエコー形状を決定する背景大気のパラメーターについて議論する。得られた知見は、平成26年度中に国際学術誌に投稿することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
システム開発で必要な特注光学素子(ファブリペロエタロン)のための備品費として、同一パーツを2式分計上していたが、実際には同ロット品の同時購入に伴い、単価が見込みよりも割安になったため、当初予定の額よりも少額となった。 次年度においては、初年度に実施した機器開発の性能評価と、その結果得られた観測データについてのデータ解析を推進し、極中間圏圏雲について得られる新たな知見を研究成果として国際会議、国際学術誌などで発表する計画である。そのため、旅費、投稿料およびデータ解析機器の導入に次年度使用額を使用する計画である。
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