研究課題
平成27年度は以下の研究を行った。(1)平成25・26年度に引き続き統合国際深海掘削計画(IODP)第338・348次航海で得られたカッティングス試料の洗浄・炭質物分離・研磨を行い、海洋研究開発機構においてビトリナイト反射率を測定した。その結果、南海トラフC0002地点の最高被熱温度は最深部でも約88℃で、掘削時の温度測定および熱物性データから推定された現在の地温勾配よりも低いこと、海底下1300-1500 mおよび2400-2500 mに反射率の逆転が見られることが判明した。(2)ビトリナイト反射率の結果と比較のため、名古屋大学において炭質物ラマン分光分析を行った。(3)カッティングス中に含まれるジルコン・アパタイト粒子の分離を行い、アパタイト(U-Th)/He年代測定を検討した。アパタイトについては、粒径が非常に小さく分析に不適であることが判明した。一方でジルコンはU-Pb年代測定が可能であり、電力中央研究所において行った。その結果、予察的ではあるが全深度で70-100 Maの島弧地殻起源の砕屑性ジルコンを含むこと、ビトリナイト反射率の逆転が見られた層準よりも深部で年代の若返りが見られることが判明した。(4)南海トラフで行った分岐断層上盤の発達史解明手法を陸上付加体に適用するため、美濃帯および四万十帯の過去の順序外衝上断層周囲の試料採取を行った。また、研究期間全体を通して得られた成果は以下の通りである。(5)南海トラフC0002地点での海底下約3000 mまでの被熱温度および砕屑性ジルコン年代を明らかにした。結果、分岐断層上盤に過去の分岐断層と推定される被熱温度および年代逆転をもたらす逆断層帯の存在が明らかになり、また、南海付加体上部では2 Ma以後の熊野海盆の形成に伴う沈降を反映して、断層上盤での大規模な物質の上昇は起こっていないことが判明した。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 14件)
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