研究課題/領域番号 |
25800282
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
山田 和芳 静岡大学, 防災総合センター, 客員准教授 (60508167)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 年縞 / 一ノ目潟 / アジアモンスーン / 晩氷期 |
研究実績の概要 |
本研究は、秋田県男鹿半島に位置する一ノ目潟年縞堆積物を対象として、年縞計数によるコアの時間軸(編年)を高精度に構築した上で、高時間分解能な地球化学分析を通じて、東北日本における過去約3万年間のアジアモンスーン変動を精緻に復元することを目的として、短時間で発生する急激な気候変動時の地域的な分パターンを議論することである。 この目的を遂行するために、1.一ノ目潟堆積物の年縞計数による高精度編年の構築、2.堆積物試料のCN分析および安定同位体比分析の2つの柱で研究を実施している。 平成26年度の実施内容について、1.については、水月湖年縞堆積物の編年方式を採用することにして、晩氷期以降についておおまかな編年を確立した。その際、イベント地層の取り扱い、ハイエイタスの判断について検討の余地を残す課題が浮き彫りになった。この点について今後詳細検討を図ることにした。2.については、903試料の測定結果に対する統計解析および考察をおこなった。その結果、晩氷期のアジアモンスーン変動は、グリーンランドで認められるヤンガードリアスと呼ばれる寒の戻りに対応する急激な環境変動を、南極氷床コアのように一ノ目潟でも確認できないことがはっきりした。これは、日本列島周辺の気候変動が、北大西洋のそれとは異なるメカニズムで生じていることを示している。今後、他アーカイブとの比較検討を行ってモデル仮説を提供していく。この成果を中心に平成26年度は、平成25年度に実施した研究について、3編の図書等を出版することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、1.一ノ目潟堆積物の年縞計数による高精度編年の構築、2.堆積物試料のCN分析および安定同位体比分析の2つの柱で研究を進めている。 1.については、水月湖方式を援用することができ、大まかな編年を構築することができている。今後、誤差をなくす精度向上の作業を行っていく。2.については、平成25年度に終了したCN分析結果の解析がおわった。この結果を、図書にまとめることができた。最終年度となる平成27年度には、安定同位体比分析も加えて総合的な解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成27年度は、前半において安定同位体比分析を実施する。2つの柱の計画のもととりまとめられた研究成果を国際誌に投稿する準備を進めていく。重ねて、本研究によって浮き彫りになった課題、例えば年縞の形成過程のモダンアナログ分析や、イベント地層の形成要因についての新規研究の位置づけなども検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、所属変更にともない、分析実験環境整備の再構築の必要性が生じた。そのため、計画遂行上問題なく、平成27年度に繰り越すことができる分析については、その費用の繰り越しをおこなった。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し分と合わせた助成金の使用計画について、繰り越した分は、平成26年度に実施予定であった安定同位体比分析費用に充て、平成27年度の前半期にて執行予定である。それ以外の使用目的は、これまでの使用計画のもと、研究とりまとめのために執行予定である。
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