研究課題
本研究では沈み込み帯全体における歪蓄積・開放の収支の解明にむけて,深部付加体の力学特性・強度を明らかにするために,九州四万十帯の岩石試料を用いて高温高圧三軸変形実験を行った.ガス圧式高温高圧変形実験装置を用いて延岡衝上断層上盤を構成する千枚岩および下盤のメランジュを温度250℃で変形させた.圧力条件としては,(1)有効圧120 MPa (封圧 = 200 MPa,間隙水圧 = 80 MPa)および(2)有効圧120 MPa (封圧 = 200 MPa,間隙水圧 = 80 MPa)を設定した.この二つの圧力条件は,千枚岩・メランジュが変形していた地下約8 kmでの(1)間隙水圧が静水圧の場合,(2)間隙水圧が静岩圧に近い場合を再現している.軸変位速度 0.5 micron/s (ひずみ速度 10-5 s-1に相当)で試料を変形し,変形実験中は封圧・間隙水圧ともに一定に保った.変形実験の結果,上盤千枚岩および下盤メランジュはともに(1)間隙水圧が静水圧条件(有効圧 = 120 MPa)下では延性的もしくは脆性ー延性遷移領域の変形を示すのに対し,(2)間隙水圧が静岩圧に近い条件(有効圧 = 20 MPa)下では脆性変形を示した.また有効圧 = 20 MPaの脆性変形時に上盤千枚岩が降伏応力 = 75 MPa,最大ピーク応力 = 100 MPa,残留強度 = 70 MPaを示すのに対し,下盤メランジュは降伏応力 = 50 MPa,最大ピーク応力 = 70 MPa,残留強度 = 65 MPaを示し,延岡衝上断層をはさんで強度に差があることが明らかになった.
すべて 2015 2014
すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)