研究課題/領域番号 |
25800284
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
谷川 亘 独立行政法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 研究員 (70435840)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 透水係数 / IODP第337次研究航海 / 熱伝導率 / 堆積盆地 / 水分活性 / 間隙径分布 / 間隙率 / 海底下微生物 |
研究概要 |
堆積盆地の熱物性と水理特性は、堆積盆地深部の温度と間隙水圧分布の推定と、有機物の熟成過程などを評価するうえで重要なパラメータである。国際統合掘削計画(IODP)の船上分析では、コア試料を用いた熱伝導率測定を行っている。しかし、地下深部における非定常な熱拡散・移動過程を理解するためには、堆積岩の熱伝導率だけでなく、熱拡散率と比熱を同時に評価する必要がある。そこで本研究では、IODP第337次研究航海によって採取された下北半島沖の三陸沖堆積盆地深部における熱物性の測定を行い、熱物性の深度分布、岩層ごとの特徴、各物性の相関関係を評価した。 コア試料の熱伝導率は0.4W/m・Kから2.9W/m・Kの範囲を示した。また、砂岩とシルト岩は深度方向に緩やかに増加する傾向が認められた。褐炭は非常に低い熱伝導率を示し、炭酸塩鉱物によるセメンテーションを強く受けた堆積岩は高い熱伝導率を示した。熱拡散率も熱伝導率と同様に深部方向に対して緩やかに増加する傾向が認められた。また、海底下1900m~2000m深度では岩石の種類による熱拡散率のばらつきが認められ、褐炭は0.16mm2/sと非常に低い値を示したのに対して、未固結粗粒砂岩は1.9mm2/sと高い値を示した。熱拡散係数は熱伝導率に比例して増加し、その傾きは過去の報告例と非常に調和的であった(Beck,1988; Kukkonen and Lindberg, 1998)。ただし、海底下1930m~1970m深度などで認められる固結度の低い粗粒砂岩は、全体の傾向から大きく外れた。一方、熱伝導率は岩石の種類にかかわらず、間隙率の減少とともに増加する傾向を示した。また、堆積岩を構成する鉱物粒子の熱伝導率を花崗岩の熱伝導率と同じ値と仮定すると、間隙率と熱伝導率の関係は鉱物粒子と間隙流体の熱伝導率の調和平均で説明できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、IODP第337次研究航海によって採取した三陸沖堆積盆地深部の岩石コア試料に対して、熱物性と間隙率を測定後、透水係数と間隙径分布の測定を行う予定であった。しかし、地球深部探査船「ちきゅう」慣熟航海により採取した三陸沖堆積盆地浅部の岩石コア試料を利用できることがわかったため、浅部コア試料の分析も行うことになった。また、海底下微生物の繁殖・活性の指標となりうる「水分活性」を測定するアドバイスをいただいたことから、水理特性の測定の前に、水分活性を測定することになった。海底下コア試料を対象とした水分活性測定は過去に例がないため、装置の選定から測定までにかなりの時間を費やした。
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今後の研究の推進方策 |
現在、熱伝導率、間隙率およびXRDによる鉱物同定と鉱物構成比のデータを基に、三陸沖堆積盆地深部の熱物性の空間分布の推定と熱物性の結果をから地下深部の温度を推定する研究をまとめる予定である。水分活性は、微生物の生息数や海底下深度と強い相関が認められなかった。しかし、海底下コア試料を対象とした水分活性測定は過去に前例がないため、テクニカルノートとして論文にまとめる予定である。 平成26年度は透水係数と間隙径分布の測定を行い、さらに、SEM-EDSとEPMA分析により生物化学的な反応に伴う間隙径構造や岩石物性の変化の推定を行う計画である。そして、地下深部の透水性が微生物の活性と流体物質循環に及ぼす影響を評価する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
制作予定であった装置の納期が年度内に合わなかったために、次年度の制作に繰り越すことになった。また、依頼測定する予定であった窒素ガス吸着法による細孔径分布測定のための試料の準備が年度内にできなかったため。 透水係数を同時に二つ測定するための部品の制作。ガス吸着法による細孔径分布の測定依頼をする。
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