研究課題
ベレムナイト(頭足類)は,長い時間軸上の環境変動に対応した遊泳生物の進化を示すモデル生物として世界的に注目されている.その基礎をなすベレムナイト進化史に関する研究は 150 年間にわたり活発に行われてきた.しかし,従来の進化史モデルは「欧州のデータ中心」という地域的なバイアスが強くかかっていたことがわかった.本研究は,研究の空白地帯となっていた東アジアにおける初期のベレムナイト化石記録を精査することで,従来の欧州モデルに全面的な改訂を迫るものである.この目的を 達成する具体的な課題として,①通説を 4500 万年も遡る三畳紀起源説の検証,②原始的グループの認識と新分類群の提唱,③高次分類群の起源の解明,④進化史初期段階での多様性・古生物地理の変遷とその背景の追究を設定している.過去2年間において課題①,②を完了し,今年度は26年度より継続している課題③,④を中心に行った.国内の博物館に加えて,ドイツ・ルール大学,シュトゥットガルト自然史博物館,ドイツ地質調査所(Hannover),ルクセンブルグ自然史博物館においてジュラ紀最初期から中期のベレムナイト標本の観察・記載,層序分布のまとめを行った.シュトゥットガルトでは,これまでにベレムナイト目の最古記録とされていたSchwegleriaのタイプおよび図示標本の観察も行った.ルクセンブルグ自然史博物館においては,欧州でのPachybelemnopseinaの最古の記録を検討し,同亜目の起源が,欧州ではなく,日本のSinemurianにある可能性を指摘した.これらをこれまでに中国の三畳系,日本の下部ジュラ系で得た結果と統合し(平成25,26年度),多様性および生物地理学的な分布変遷についてについてまとめ,前期三畳紀の東部テチスー西部パンサラッサから,ジュラ紀前期を通した従来の知見を覆すベレムナイトの初期進化史について新たに提唱した
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Palaeontology
巻: in press ページ: in press
doi: 10.1002/spp2.1019
Lethaia
DOI 10.1111/let.12155
Swiss Journal of Paleontology
DOI 10.1007/s135358-015-0100-3
Marine Biology
DOI 10.1007/s00227-015-2750-5
ibayasuhiro.com