研究課題/領域番号 |
25800289
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
辻野 匠 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (80357516)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 色層序学 / 分光測色 / スペクトラム / 泥岩 / 第三紀 |
研究概要 |
本研究の目的は,これまで主観的に記載されてきた泥岩の色を分光測色計で測定する方法を確立した上で定量的な泥岩の色の層序を構築することである.泥岩の色の層位的変化が如何なる古環境的あるいは埋没後の変化を反映しているのかを明らかにすることができれば「色層序学」を樹立することができる. まず,野外での分光測色の方法を確立するために,本年度では色の変化に注目して層序区分が行われている新潟県加茂地域及び胎内の中新統~更新統の泥岩を調査し,分光測色を実施した.このために携帯可能な分光測色計を購入し,計測したスペクトルから色指数を計算するプログラムを自作した.スペクトルが正しく計測され,プログラムが正しく計算していることを標準マンセル色票を複数の分光測色計で測定・比較することで確認した. 分光測色の値(色指数)は層準ごとにある程度はクラスターを形成するようにも見えるが,ばらつきも大きく現時点では層準ごとに明白な違いが認定できた,とは言えない.ばらつく理由の一つに,計測する面の微妙な状態の違いによってスペクトルが変化することがある.また,泥岩のように彩度が低い物体の場合,通常よく使われているCIELab表色系ではa*b*平面の原点近くに集ってしまうために誤差が大きくなりやすい.後者については異なった表色系を導入することにし,計算するプログラムを作成したところ,まとまりについてはある程度は改善された.将来的には明るさ指数(L*)も含めて統合的に解析するプログラムを作成する必要がある.前者については治具やアタッチメントを作成して安定して測色できるようにする必要がある. 同時平行で採取した岩石の構成物を検鏡も実施中である.これについては初生的な構成物の量比の違い,続成による陸源・生物源砕屑物の変化(変質)にもとづいて既定の層序区分を評価するもので,構成物と色との関係を比較するのが目的である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
野外で半固結泥岩を安定して測色する方法は確立していないので,今年度の調査は実施試験としては貴重なものであった.ある程度のクラスターが認定できたものの,まだ安定して再現性よく測定できるようにはなっておらず,その確立が必須である.
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今後の研究の推進方策 |
安定した分光測色ができていないので,層序単元ごとの色のキャラクタライズや,色と構成物との関係及びその解釈(古環境・埋没史)などの研究に進めていない.安定した測色にむけて,1つは解析方法を改善することと,もう1つは,安定して測色できるための治具・アタッチメントを作成し,手近なフィールドで実験を繰り返すことから始める(注: 半固結泥岩は空気にさらしておくと乾燥と酸化により変色してしまい初生的な色ではなくなってしまうため,実験結果をフィードバックしやすい手近なフィールド実験が必要).
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費を他の予算で実施したため,差額が生じた.この差額で分析を行い,これに関わる費用に充当しようと考えたが,分光測色の解析が進まず,年度内に分析まで到ることができなかった. 今年度の調査旅費と分析関係の費用として充当する.野外における安定した分光測色の方法を確立するために実験的にフィールドに出掛け分光測色を繰り返す必要があり,当初の計画よりも調査旅費が必要となる.
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