研究課題/領域番号 |
25800290
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北九州市立自然史・歴史博物館 |
研究代表者 |
御前 明洋 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (70508960)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アンモノイド / イノセラムス / 共生 / 古生態 / 中生代 / ナミマガシワ科 / ノストセラス科 / 付着生物 |
研究概要 |
本研究は,中生代特有の付着基盤であるアンモノイドやイノセラムスなどの軟体動物殻を利用した付着生物相を明らかにすること,および,付着生物を鍵として古生態や古環境に関する情報を抽出することを目的としている. 平成25年度は,(1)北海道小平~羽幌地域,(2)鹿児島県下甑島,(3)大分県大野川流域,(4)香川県東かがわ市~徳島県鳴門市,(5)和歌山県有田川地域などに分布する白亜系の野外調査を行い,(1)~(5)全ての地域において,イノセラムスやアンモノイド,オウムガイのいずれかの軟体動物殻表面に,サンゴやコケムシ,カンザシゴカイ,二枚貝などの付着生物の化石が見られることを確認し採集を行った.また,野外調査の際に訪れたむかわ町立穂別博物館,徳島県立博物館,和歌山県立自然博物館において標本調査を行い,これらの博物館に付着生物を伴うアンモノイドやイノセラムスが収蔵されていることを確認し観察を行った. 室内作業では,ノストセラス科アンモノイドに付着し共生していたと考えられるナミマガシワ科二枚貝についての論文を執筆し,受理・掲載された.また,(1)北海道苫前地域から産出したカキを伴う大型アンモノイドのクリーニングや観察,(2)ナミマガシワ科二枚貝との共生関係を維持しながら進化したと考えられるノストセラス科アンモノイドの形態進化過程の検討,(3)高知県の宮ノ原層産アンモノイドに付着するコケムシ類が属するグループの特定などを行った.その他,平成25年度に研究代表者の所属する北九州市立自然史・歴史博物館に寄贈された熊本県天草地域産の白亜紀イノセラムス化石に,多くのカンザシゴカイや二枚貝が付着しているのを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では付着生物を伴う軟体動物の化石をどの程度,発見・採集できるかが研究を進める上での最大の課題だと考えていたが,平成25年度の野外調査によって,多くの調査地域で付着生物を伴う化石を採集することができ,また,既存の博物館資料にも付着生物を伴うアンモノイドやイノセラムスが数多くあることが確認できた点で,予想以上に大きく進展したと言える.また,室内作業でも,ノストセラス科アンモノイドとナミマガシワ科二枚貝の共生についての論文が受理・掲載されるなど多くの進展があった.ただ,北海道苫前地域産のカキを伴う大型アンモノイドの処理と分類学的検討が当初考えていたほど容易ではなく,完了には至らなかったので,このような評価とした.
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今後の研究の推進方策 |
各地での野外調査をさらに進め,付着生物を伴う中生代軟体動物化石の追加標本の採集を行うとともに,それらのクリーニング処理や産状観察を行う.特に、異常巻アンモノイドとナミマガシワ科二枚貝の共生関係や進化についての興味深い情報が得られると期待される四国の和泉層群の調査や、北海道苫前地域産のカキを伴う大型アンモノイドの処理や観察を進める。さらに,追加標本の入手状況や採集標本の観察結果によっては必要に応じて既存の博物館資料の観察も行う.これらの調査を元に分類学的・古生態学的検討を進め,論文の執筆を行う.
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