本研究は,中生代特有の軟体動物殻を付着基盤として利用した付着生物相を明らかにすること,および,付着生物を鍵として古生態や古環境に関する情報を抽出することを目的としている. 平成27年度は,ジュラ系豊浦層群,白亜系御所浦層群・蝦夷層群・姫浦層群・和泉層群・外和泉層群の化石について,野外調査と博物館標本調査を行い,多くの付着生物化石を確認することができた.前年度,前々年度の調査結果も合わせ,国内の中生代軟体動物化石表面に豊富に付着生物化石が見られることが分かった.白亜紀の付着生物化石については,Pravitoceras sigmoidaleに付着するナミマガシワ類以外は海底に横たわる死殻や底生生物への付着であり,当時の北西太平洋域の砂泥底環境において,軟体動物殻を付着基盤として様々な付着生物が生息していたことがわかった.また,付着生物の観察から,埋没前の死後の運搬や破損の少ない化石でも,死後埋没までにある程度の時間があったことがわかるなど,付着生物からタフォノミーを考える上で重要な情報を読み取れることを明らかにした.平成27年度は本研究課題の最終年度に当たり,本研究の成果の概要を紹介する学会発表を行った.現在,論文を作成中である.
|