研究課題/領域番号 |
25800293
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
石橋 秀巳 静岡大学, 理学部, 講師 (70456854)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マグマ / 結晶 / レオロジー / 火山噴火 / テクスチャー |
研究実績の概要 |
本研究では,結晶を多量に含む高粘性溶岩のレオロジー的性質と,この性質に及ぼす浮遊結晶の影響の解明を目的とし,高粘性溶岩の高温一軸圧縮変形実験を行った。本研究では主に①北海道白滝の黒曜石溶岩,②香川県五色台のサヌカイト,③鹿児島県桜島火山の昭和溶岩について実験を行った。その成果をそれぞれ以下に説明する。 1.高温一軸変形実験装置による高粘性溶岩の粘性率測定の信頼性を確認するために,北海道白滝の無斑晶質黒曜石溶岩について実験を行った。その結果,ケイ酸塩メルトの粘性率計算の一般モデルとして評価されているGiordano et al.(2008)のモデルによる粘性率予測値を0.2 log unitで再現できた。これより,本研究の実験手法によって高粘性マグマの高精度粘性率測定が可能なことが立証できた。 2.香川県五色台のサヌカイトを用いた実験では,メルト-気泡系におけるマイクロライトの配列がマグマの粘性率に及ぼす影響を検討した。その結果,結晶量が38wt.%程度の場合で,結晶配列がランダムな場合に比べて平行配列している方が2桁程度粘性率が小さくなることを明らかにした。この結果は,火山噴火時のマグマの粘性率変化を考えるうえで,その流動ヒステリシスが重要な役割を果たすことを意味する。 3.桜島昭和溶岩を用いて行った実験では,メルト‐気泡‐結晶3相系マグマであるこの溶岩の粘性率を,温度と歪速度の関数として定式化した。また,粘性‐脆性遷移のおこる条件も実験的に決定した。更に,実際の噴火の際に観測された溶岩流の厚さ・速さと比較し,本研究で求めたレオロジー則が妥当であることを確認した。本研究で定式化したレオロジー式は,桜島及び類似の火山における溶岩流の流動プロセスを評価するうえで役立つと期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究を進めるうえで,溶岩の変形に伴って結晶配列のドメイン構造が発達し,物性の異方性が弱まるという予想外の現象が発見され,これについて評価・考察を行うのに時間を要した。また,研究期間中の桜島火山の噴火活動を鑑み,溶岩流噴火の際に推移評価の実用に耐えるモデルを構築するため,過去の噴火観測結果との対比を行うなど,当初計画の予定に入れていなかった範囲まで研究内容を拡大した。この結果,当初計画よりも多くの時間を要し,研究は概ね終了しているものの,計画年度内に論文投稿まで至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
計画した実験は既に終えているので,今後の1年間のうちに研究成果を論文にまとめて公表することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を進めるうえで,溶岩の変形に伴って結晶配列のドメイン構造が発達し,物性の異方性が弱まるという予想外の現象が発見され,これについて評価・考察を行うのに時間を要した。また,研究期間中の桜島火山の噴火活動を鑑み,溶岩流噴火の際に推移評価の実用に耐えるモデルを構築するため,過去の噴火観測結果との対比を行うなど,当初計画の予定に入れていなかった範囲まで研究内容を拡大した。この結果,当初計画よりも多くの時間を要し,研究年度内に論文投稿まで至らなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費として,論文執筆に必要な消耗品費を計上する。 その他として論文公表のための英文添削および出版費を計上する。
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