研究課題
長石のカソードルミネッセンス(CL)を用いて隕石母天体が受けた衝撃変成作用を明らかにするべく、前年度までに衝撃変成作用を模擬した動的ならびに静的圧縮実験を各種長石に行い、回収試料のCL分析から衝撃変成作用により生成される構造欠陥の検出ならびにその欠陥性精密度が圧力、圧力保持時間ならびにSi含有量に依存することを明らかにした。これにより得られた検量線をもとに火星や月隕石に産出する長石の発光特性からそれぞれが受けた衝撃圧力を推定することを最終年度の目標とした。火星隕石には正長石とナトリウム成分に富むアルバイトが、月隕石にはカルシウム成分に富むアノーサイトが存在し、それらのCLスペクトル分析から衝撃変成作用を受けた長石に特徴的な紫外から青色領域のCL発光が検出された。各隕石の長石はSi含有量がそれぞれ大きく異なるため、Si含有量に対応した検量線を用いて衝撃圧力を推定した。その結果、圧力保持時間が10-6秒を有する動的圧縮実験をもとにすると圧力は25-35GPaの範囲に収まるのに対して、10-100秒オーダーである静的圧縮実験では15-25GPaと両者には約10GPa程度の差が生じる。天体衝突時の圧力保持時間は10-2から1秒オーダーといわれていることから、実際の圧力はこの間に収まることが示唆される。隕石に分布する長石の発光強度は比較的均一であり、一部衝撃溶融脈に接した長石のみ発光が極めて微弱であることがCL像観察から判明した。これは、ある閾値を超えない限りCLに対する温度の影響は極めて少ないことが示唆される。これらの結果から、現在までの提案されていた圧力計のほとんどが動的もしくは静的圧縮実験のどちらかのみに頼ったものであり、実際の天体が受けた衝撃圧力はそれらの中間的な値となることが判明した。そのため、従来の手法でこれまでに推定された様々な隕石の衝撃圧力を再度見直す必要がある。
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