研究課題/領域番号 |
25800296
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
永嶌 真理子 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (80580274)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 緑簾石 / 遷移金属イオン / レアアース / 結晶構造 |
研究概要 |
本研究は,天然・合成緑簾石族鉱物における希土類元素や遷移金属元素などの陽イオンおよびOH基をはじめとする陰イオンの挙動が結晶構造にどのような影響を与えるのかを系統的かつ体系的に解明し,配位多面体ごとのキャラクタリゼーションを行うことで造岩鉱物一般に広く適用できるイオン置換と結晶構造変化,水素結合との関係に関する一般則を見出すことを目的とする. 本研究では地殻~上部マントルまでの広い温度圧力条件で生成する緑簾石を主な研究対象としている。緑簾石は,その生成プロセスを反映する多様な化学組成を持ち,希土類元素やストロンチウム,さらに水のリザーバーとしての役割を担っている.緑簾石族鉱物がこのような重要な役割を担っていることはこれまで天然試料の研究を通じて理解されてきたが,「希土類元素や他の資源金属の貯蔵庫としての役割」や「地殻から上部マントルにおける水の循環との係り」を鉱物合成実験や相平衡実験などの実験鉱物学的なアプローチによる実態の解明は本研究のオリジナリティーであるといえる. また緑簾石族鉱物は,多様な温度圧力条件で生成するだけではなく,様々な配位多面体(9, 10配位,3種類の6配位と4配位)からなる結晶構造をもつ.さらにOH基だけではなくフッ素や塩素などの多様な陰イオンが存在することが知られている。そのため,本鉱物は陽イオン置換と構造変化の関係の法則性の確立,さらに陰イオンが構造に与える影響の検討に最適であるといえる. 本研究課題を達成することにより,地球・惑星構成物質としての鉱物の化学組成,安定性,物理的性質を統一的に理解し,かつ,地殻から下部マントルまでの鉱物の存在状態と物質循環の体系的解明の基礎が構築されるといえる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,陽イオンの結晶内分布の支配要因の解明するため,(1)含バナジウム緑簾石合成し,バナジウムの挙動を解明すること,(2)Ca-REE3+置換を伴う緑簾石族鉱物を合成することを課題とした。 (1) ピストンシリンダー高圧発生装置を用いた合成実験の結果,ある特定の温度圧力で含バナジウムクリノゾイサイトが生成することを明らかにした。今後,構造解析を行う。 (2) (1)の合成実験が困難性から(2)に係る実験の開始が遅れたため,代替案として天然の褐簾石を用いて陽イオンが結晶構造に与える影響について検討した。この研究が新鉱物「ランタンフェリ赤坂石」「ランタンフェリアンドロス石」の発見につながった(2014年2月3日に国際鉱物学連合により承認)。 したがって,当初の計画通りではない部分はあるが,全体として研究はおおむね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も基本的に当初計画に則って進める。本研究では主に緑簾石族鉱物およびその類縁鉱物群を研究対象としているが,最終的には造岩鉱物に広く適用できるイオン置換と結晶構造変化,水素結合との関係に関する一般則を見出すことを大きな目標を念頭に置いて研究を進めている.来年度は (1) 複数の3価の遷移金属イオンを含む合成緑簾石における遷移金属イオンの6配位席間の分配係数を決定し,それに基づき陽イオンの結晶内分配の支配要因の解明 (2) 陰イオンが緑簾石の結晶構造に与える影響の理解~緑簾石におけるOH基,OD基の挙動の検討 (3) 緑簾石類縁鉱物群の結晶化学的検討を通じて配位多面体の特性の多角的・統合的な理解 という計画を進める。
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