地球中心核の詳細な化学組成は、地球の形成と進化を理解する上での根本的な情報であるにも関わらず、いまだに明らかになっていない。核の組成を明らかにすることにより、核のダイナミクスの理解促進に加え、核の形成条件(温度、圧力、酸素雰囲気)に制約を与えることがきる。これは地球形成過程を議論する上で重要な情報である。本研究では、高圧高温実験により、内核外核境界の圧力において鉄-軽元素系の状態図を作成する。状態図から予想される内核外核境界における軽元素の分別から、核の軽元素として地震学的観測を満たせるかどうかを議論し、化学組成の解明を目指す。 平成25年度は、レーザー加熱式ダイアモンドアンビルセルを用いて、130万気圧までの鉄-ケイ素系の融解実験を行った。実験圧力を固定し、出発物質の組成を変えて複数回融解実験を行った。融解した試料を常圧に回収した後、薄膜試料作製装置イオンスライサ、もしくは集束イオンビーム加工装置を用いて研磨を行い、電界放出型電子線プローブマイクロアナライザーと電界放出型走査電子顕微鏡による組織観察と組成分析を行った。得られた各相の化学組成に基づいて、鉄-ケイ素系の状態図を作成した。作成した状態図から、共融点における液体鉄中のケイ素濃度は負の圧力依存性を持つ事が明らかになった。今後は、さらに高圧力下における融解実験を行い、液体-固体鉄間のケイ素の分別を明らかにし、生じうる内核外核間の密度ジャンプを求める。ケイ素が地震学的観測事実を満たせるかどうか議論する。
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